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2025.07.04

【学校に通えない子どもたち】Vol.1 世界で学校に通えない子どもたちはどれくらいいるの?

教育
内戦の影響を大きく受けたシリア北西部のイドリブの学校。15名以上の子どもたちがテントの中で授業を受けている。
内戦の影響を大きく受けたシリア北西部のイドリブの学校

日本にいる多くの皆さんは、毎日学校に通い、勉強をしたり、友達と大切な時間を過ごしたりしていることと思います。それが「当たり前」の日常だと感じている人も多いかもしれませんね。

2015年、世界中の国々が集まってSDGs(持続可能な開発目標)を採択しました。これは、2030年までにより良い世界を実現するための17の目標です。その4番目の目標(SDG4)では、「すべての人々に質の高い教育を」提供することが約束されています。

しかし、ユネスコ(UNESCO)によれば、学校に通っていない子どもたちは、2015年から2024年までで1%しか減っていません[1]。学校に通えないと、貧困から抜け出すことが難しく、貧困の連鎖につながる可能性が高まってしまいます。

学校に通えない子どもたち 

コンゴ民主共和国イツリ州ヴィクトワールの学校で授業が行われている様子。多くの生徒がいる教室内に光が差し込む様子が印象的
コンゴ民主共和国イツリ州ヴィクトワールの学校で授業が行われている様子 
(同州では、紛争の激化により学校に通えない子どもが130万人を超えている) 

最新の報告によると、2023年時点で、世界では約2億7,200万人もの6歳から17歳までの子どもや青少年が学校に通えていません[2]。 

これは、日本の総人口(約1億2,300万人、2024年)の2倍以上にあたる数です。 

特に学校に通えない子どもたちが多いのは、経済的に困難な状況にある「低所得国(ていしょとくこく)」と呼ばれる国々です[注]。 

 

[注]「低所得国」とは、国全体の収入が少なく、国民一人ひとりの生活水準も低い傾向にある国々のことを指します(※世界銀行が、国の経済状況によって分類しています)。 

 

このような国々では、政府がすべての子どもたちが教育を受けるのに必要な数の学校を建設したり、教員を確保したり、教材を整備したりするための資金が不足していることが多くあります。 


地域別に見ると、特に「サハラ以南アフリカ」(アフリカ大陸の北アフリカを除く地域)では状況が深刻です。例えば初等教育の年齢(おおむね6-11歳)の子どものうち、約5人に1人(ひとり)が学校に通えていません[3]。 

マダガスカル南部で子どもたちが暮らしている家の様子。干ばつで乾いている
マダガスカル南部で子どもたちが暮らしている家の様子

就学率

初等教育(おおむね5-7歳から11-12歳)・中等教育(11-12歳から18-19歳)の就学率は、以下表の通りで、高所得国・低所得国の間で大きな差があります[4][注]。 

純就学率 [注] 高所得国 低所得国 
初等教育99%80%
中等教育92%40%
(出典)世界銀行Indicators (2022年度) 

[注] 中等教育は、前期中等教育と後期中等教育に分けられます。日本の中学校は前期中等教育、高校は後期中等教育に該当します。この記事では、SDG4にならって、後期中等教育(高校)までを受けられない子どもたちについて取り上げます。 
[注] 純就学率は、学齢期の子どもの総数に対する就学者の数を示す指標です。 

女の子のほうが学校に行きにくい?「ジェンダー」による違い 

さらに、男女の性別(ジェンダー)によっても、学校への通いやすさに違いが見られることがあります。 
高所得国では、初等・中等教育の就学率において男女平等がほぼ実現できているのに対し、低所得国では、男女間で初等・中等教育の就学率に約5%の違いがあります。 
低所得国全体で、女子は学校へ行くことの障壁が比較的大きいといえます[5]。 

純就学率高所得国(男)高所得国(女)低所得国(男)低所得国(女)
初等教育96%(2018) 96%(2018) 83%(2016) 78%(2016) 
中等教育90%(2018) 91%(2018) 36%(2018) 31%(2018) 
(出典)世界銀行Indicators (2022年度) 

なぜ女の子のほうが学校に通いにくいのでしょうか? 

低所得国や一部の地域では、古くからの慣習や文化的な背景から、「女の子は早く結婚して家庭に入るもの」、「女の子に教育は必要ない」といった考えが根強く残っている場合があります。 

また、家事や水汲み、弟や妹の世話といった労働を女の子が担わなければならなかったり、早すぎる結婚(児童婚)や出産が原因で学校を続けられなくなったりするケースも少なくありません。 

さらに、学校に女性の先生が少ないことが、女の子が安心して学校に通うことを難しくしている場合もあると指摘されています[6]。  

 

次の記事では、学校に行けない理由と原因について、よりくわしく考えていきます。 

 

この記事を書いた人:アドボカシー部インターン ハギヤユカリ 

 


この記事は、セーブ・ザ・チルドレン「学校に通えない子どもたちは世界にどのくらいいるでしょうか?その理由と問題について紹介します」のコラムを基に、最新情報を加え、子ども・ユース向けに解説したものです。 

[1] Global education monitoring report, 2024/5, Leadership in education: lead for learning (UNESCO) 
[2] UNESCO (2025) 272 million children and youth are now out of school.
[3] Global education monitoring report, 2024/5, Leadership in education: lead for learning (UNESCO) 
[4] World Bank (2022) Indicators, https://data.worldbank.org/indicator.  
[5] World Bank (2022) Indicators, https://data.worldbank.org/indicator
[6] 黒田一雄、横関(よこぜき)祐見子(ゆみこ)(2005)国際教育開発論 理論と実践, 有斐閣 

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