自分と社会・世界 ISSUES

2025.05.01

Vol.1【学校保護宣言を知ろう】教育への攻撃とは?

緊急・人道支援教育子どもの保護

「学校保護宣言」ってなに?

「学校保護宣言」とは、紛争や争いが起きている国で、学校や教育を攻撃から守るために作られた国際的な宣言です。

この宣言は、学校を軍の基地として使ったり、学校をわざと壊したりすることを禁止しようという考えに基づいています。

2015年にノルウェーとアルゼンチンの政府が中心になって「学校保護宣言」を作り、2025年4月時点で、121の国がこの宣言に賛同*しています。

*ここでの賛同とは、賛成することや支持を示すことを指しています。

攻撃された学校の廃きょを眺めるイッサさん(7歳、シリア北部の都市、ラッカにて)

なぜ「学校保護宣言」が必要なの?

紛争など争いが続いている国では、教育そのものが狙われることがあります。

教育への攻撃」とは、どういうことでしょうか?

 

これには、例えば次のようなことが含まれます[2]:

☑️ 学校施設への武力攻撃・破壊
☑️ 学校や大学が軍の基地として使われる(軍事利用といいます)
☑️ 生徒・学生や教員などが拉致されたり(連れ去られること)、殺されたりする
☑️ 学校や通学路で、子どもが無理やり兵士になるよう誘われたり、性暴力を受けたりする
☑️ 大学や研究所など、本や勉強を通して社会をより良くしたいと考えている人が多くいる高等教育の施設がわざと攻撃される

 

紛争や争いが起きると、ただ建物が壊されるだけじゃなくて、「学びたい」「教えたい」という気持ちや将来への希望までもが、危機にさらされるのです。

紛争によって破壊されたガザ地区南部の都市ハーン・ユーニスにある学校の跡地

そもそも国際宣言って?

「学校保護宣言」は、国際条約とは違って、法律のように各国に何かを強制するルールではありません。

しかし、こうした国際的な宣言では全世界が守るべき原則や大切な考えを定めており、賛同した国では、この考えが国内の法律に取り入れられることもあります。

 

例えば、1948年に作られた「世界人権宣言」は、20世紀に起きた2つの世界大戦で多くの人の命が奪われ、人権が踏みにじられた反省から、こうした悲劇を二度と繰り返さないよう「人権を守ろう」という考えのもとにつくられました。
「世界人権宣言」で明確にされた基本的人権の考え方は、今では多くの国々の憲法や法律に取り入れられ、その後の世界で人権がより尊重されるようになるきっかけとなりました[1]。

 

「学校保護宣言」の場合も、たとえ紛争や争いが起きている中であっても、争いに関わっている国やグループの間での最低限のルールとして、「子どもたちの学びの場である学校を攻撃したり、軍事利用してはいけないんだ」という意識を広めるうえで、とても重要な意味を持っています。

「学校保護宣言」が目指すこと

「学校保護宣言」は、こうした状況に対し、教育の場を安全地帯にするためにつくられました。

この宣言には、「武力紛争が教育に与える悪影響を減らしていこう」、「地域社会の未来を築く礎である教育を守ろう」、そして「どこであっても、子どもたちが安心して勉強できる世界にしよう」という強いメッセージが込められています。

 

なお、現在世界121ヶ国がこの宣言に賛同していますが、日本はまだ支持を示していません
日本政府も一刻も早く「学校保護宣言」に賛同するよう、あなたの力を貸してください!

学校保護宣言キャンペーン2025
STOP学校への攻撃「学校保護宣言」キャンペーン

 

<参考>

● 学校が軍事利用される理由について、もっとくわしく知りたい人はこちら
●「学校保護宣言」の全文(日本語訳)はこちら
●「学校保護宣言」に賛同している国の一覧はこちら(英語)

 

SDGゴール4
SDG目標4 質の高い教育をみんなに

「学校保護宣言」は、SDG4「すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進する」の目標を達成する上で重要な意義を持つ宣言です。

 

この記事を書いた人:アドボカシー部社会啓発チーム 唐語思

 


[1] 法務省人権擁護局 公益財団法人人権教育啓発推進センター「国際連合創設70周年記念 すべての人々の幸せを願って~国際視点から考える人権~ 作品紹介サイト
[2] JNNE 「『攻撃される教育 2022(Educaiton under Attack 2022)』 日本語概要」

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