自分と社会・世界 ISSUES

2025.05.01

Vol.2【学校保護宣言を知ろう】学校はなぜ紛争下で狙われやすいの? 

緊急・人道支援教育子どもの保護

学校が攻撃の対象にされてしまう理由

世界各地で紛争が発生する中で、学校が戦闘に巻き込まれたり、標的にされたりすることが起きています。みなさんもニュースなどを通じて、壊された学校の映像を目にしたことがあるでしょうか。 
 

学校が攻撃される理由の一つに、「学校が軍事上の目的で利用されているから」ということがあります。 
 

多くの学校は、人の暮らす家よりもしっかりした建物で、教室として部屋が複数あり、広い校庭もあります。上下水道や、調理する場所も整備されています。このため、軍や武装グループによって基地として、また兵士が寝泊まりしたり食料や武器を保管したりする場所などとして、利用されることがあります。 
 

このように、軍事利用されたり、「軍事利用されているのではないか」と疑われた場所は、攻撃の対象にされてしまうこともあります。中東のパレスチナ・ガザ地区では、2023年10(がつ)から1年3ヶ月間(かげつかん)にもわたるイスラエル軍による包囲と砲撃により、ガザ地区内の学校施設の96%が全部または部分的に破壊されてしまいました[1]。 

紛争|ガザ地区ハン・ユニスの破壊された道を歩く子どもたち 
ガザ地区ハン・ユニスの破壊された道を歩く子どもたち 

校舎への攻撃だけでなく、子ども・学生たちや先生たちが連れ去られたり、一方的に逮捕されたり、傷つけられ殺害されたりすることも起きています。また、学校の近所や通学路においても、さまざまな暴力の危険にさらされます[2]。 
 

学校や大学の軍事利用や攻撃、そこに集う人たちに対する暴力は、「教育への攻撃」とも呼ばれます。世界では2億3,400万人もの子どもたちが紛争により教育を受けられなくなっていると指摘されています[3]。 

教育を攻撃から守る「学校保護宣言」 

このような現状を受け、国際社会は2015年、「学校保護宣言(Safe Schools Declaration)」を策定しました。「学校保護宣言」では、開校中の学校を軍事利用しないことなどを掲げ、「教育の場を安全地帯にするため、私たちは最大限に努力をする」と述べています。 

 

この宣言は、国際条約のように法律による強制力を持つものではありませんが、教育が攻撃から守られることを目指して、現時点で世界121ヶ国が賛同しています[4]。 

 

このうち、世界経済・情勢について協議する「G7」(Group of Seven=7ヶ国)各国では、イタリア、カナダ、フランス、英国、ドイツがすでに賛同しており、2025年1(がつ)に米国が支持を表明したことから、G7で賛同していないのは日本だけとなりました。 

※「学校保護宣言」に賛同している国の一覧はこちら(英語):

学校保護宣言に賛同している国は121ヶ国。2025年1月にアメリカも賛同をいs召しました。(GCPEA提供)
「学校保護宣言」に賛同している国(青色)。最近では、2025年1(がつ)に米国が賛同【GCPEA提供】


世界のどんな場所にいても、教育を受けられることは、すべての子どもに保障される基本的人権です。日本政府も「学校保護宣言」に賛同するよう、セーブ・ザ・チルドレンでは引き続き、さまざまな働きかけを行っていきたいと考えています。 

ウクライナ・キエフ近郊、破壊された教室で卒業アルバムの写真撮影をするボリスさん(17歳) 
ウクライナ・キエフ近郊、破壊された教室で卒業アルバムの写真撮影をするボリスさん(17歳)

※これらの写真は、武力攻撃により破壊された学校の卒業生インタビューを行い、彼らの希望や抱負を掲載した卒業アルバムを作成するセーブ・ザ・チルドレンの取り組みの一環 で撮影されたものです[5]。 (「”学校はありません。私たちは何から卒業するのでしょうか?” 激動の最終学年、退学者らは卒業式を控える」)

あなたにできること

「学校保護宣言」は、世界の紛争において、学校を攻撃から守るために作られた国際的な指針です。
10年前に作られたものの、日本政府はまだ、この宣言に賛同していません。

日本政府も「学校保護宣言」に賛同してくれるよう働きかけるため、いま、市民のみなさんから署名を集めています。

下の【学校保護宣言キャンペーンに参加する】のボタンから、あなたの署名・意見を寄せてください。

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SDG4 質の高い教育
SDGs 目標4 質の高い教育をみんなに

「学校保護宣言」は、SDG4「すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進する」の目標を達成する上で重要な意義を持つ宣言です。 

 

この記事を書いた人:アドボカシー部社会啓発チーム 松山晶

 


[1] Save the Children. “Missing Futures: how the systematic undermining of children’s rights in Gaza impacts their ability to learn now and, in the future.” (28 November) https://www.savethechildren.org.uk/blogs/2024/missing-futures–how-the-systematic-undermining-of-children-s-ri 
[2] Global Coalition to Protect Education from Attack. “Education under Attack 2022.” (2022) https://protectingeducation.org/publication/education-under-attack-2022/ 
[3] Education Cannot Wait. “Global Estimates 2025 Update.” (January 2025)  https://www.educationcannotwait.org/global-estimates-2025-update 
[4] GCPEA. “The Safe Schools Declaration.” https://ssd.protectingeducation.org/ 
[5] Save the Children – Ukraine: “There is no school – what are we graduating from?” School leavers abstain from graduation festivities after turbulent final year (July 2023) https://www.savethechildren.net/news/ukraine-there-no-school-what-are-we-graduating-school-leavers-abstain-graduation-festivities

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