【Vol.4 保健・栄養】子どもたちの命と健康を守る予防接種－世界の現状と必要な支援－

2025.01.27

保健・栄養

予防接種とは

予防接種とは、病気に対して免疫をつけたり、免疫を強くするためのワクチンを接種することです。

ワクチン接種により、病気にかかることを予防することができ、病気にかかったとしても、重い症状になることを防げる場合があります。また、人に感染させてしまうことで社会に病気がまん延することを防ぐためにもとても重要です[1]。　

子どもの権利条約の第24条では、「いつでも健康でいるために保健・医療サービスを受ける権利」が定められており、すべての子どもには、「健康への権利」として、ワクチン接種を受ける権利があります。

予防接種を受けることで、病気にかかるのを防ぐことができるだけでなく、健康で休まずに学校に通うことができるようになります。また、病気になったときにかかる医療費などを節約することができます。

さらには、命を救われた子どもたちが健やかに成長し、社会活動や経済活動に参加することができ、よりよい生活を送ることができるようになります。このように、予防接種は、子どもたちの「生きる権利」や「育つ権利」を実現する上でも、不可欠なのです。

日本では、病気にかかりやすい年齢や重症化しやすい年齢などに応じて、病気ごとに予防接種のスケジュールが決められており、適切な期間内に接種を受けることができる仕組みが整っています[2]。

一方で、世界に目を向けると、2,700万人もの子どもがワクチン接種を受けたことがないか、十分に受けられずにいます。中でも「ゼロドース・チルドレン」と呼ばれる、一度も予防接種を受けたことのない子どもは世界で1,450万人にも上るとされています[3]。

また、年間150万人もの子どもが、ポリオやはしかなど、予防可能な病気が原因で5歳の誕生日を迎える前に命を落としています[4]。　

特にアフリカや紛争の影響を受けている地域では、状況が深刻です。ゼロドース・チルドレンは、アフリカ地域では18.7%と、世界の他の地域（6.9%）に比べると約2倍にもなることが分かっています。また、紛争地域は22.7％と約3倍多くなっています[5]。　

こうした子どもたちが必要な予防接種を受けることができるよう、さまざまな取り組みを行う国際機関があります。「Gaviワクチンアライアンス」はその一つで、開発途上国で予防接種率を向上させることにより、子どもたちの命と健康を守ることを目的として、2000年に設立されました。

Gaviは、開発途上国の政府と協力し、子どもたちがワクチン接種を受けられるようにするために、その重要性を人々に知ってもらう活動や、保健医療施設が十分でない地域にワクチンを届けるなどの色々な形の支援を行っています。

Gaviの支援で、2023年までに、11億人の子どもがワクチン接種を受けることができ、1,800万人の子どもの命が救われました。またワクチンキャンペーンを通じて、19億回の予防接種が実施されました[6]。

日本政府は、これまでに、他の先進国とともに、Gaviが計画を実行するための資金援助を行っており、より多くの国や地域の子どもたちに支援を届けることに貢献してきましたが、さらに予防接種の効果を高めるには、まだ支援が必要です。

開発途上国の子どもたちが基本的な予防接種を受けるには、一人当たり平均58ドル（約9,048円）必要だとされており[7]、予防接種を受けることができれば、年間400万人以上の子どもが命を落とすことを防ぐことができます[8]。

開発途上国、先進国それぞれの政府と国際機関は、世界中すべての子どもが必要な予防接種を受け、健康に過ごすことができるよう、これからも連携しながら取り組んでいくことが求められています。

※1ドル＝156円として換算（2024年1月20日時点）