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2025.02.27

【Vol.5 保健・栄養】保健医療人材の育成 ―質の高い保健医療サービスのために―

保健・栄養

 

私たちは、病気にかかったり、けがをしたりしたときに、安心して治療を受けることができます。これは、医師、歯科医師、薬剤師、看護師、助産師など保健医療の専門家を始めとする保健医療従事者に、質の高い保健医療サービスを提供してもらうことができるからです。 

足りない保健医療従事者

一方、開発途上国では、保健医療従事者が大幅に不足しており、多くの人々が必要な時に保健医療サービスを受けることができていません。その原因はさまざまですが、教育や訓練を受ける機会が限られていて、専門家としての知識を持つ人が不足していることが挙げられます。また、労働条件が厳しく、やめてしまう人が多いことも課題となっています。特に農村部では状況がより深刻で、地域の人々が病気を予防したり、治療を受けることを難しくしています。 

保健医療従事者を育成することは、国際社会が取り組むべき重要な課題となっています。持続可能な開発目標(SDGs)[1] ゴール3「すべての人に健康と福祉を」の中で、開発途上国では、医師や看護師、助産師、薬剤師などの保健医療の専門家をもっと増やし、そのための必要な資金を確保したり、必要な知識や技術を身に着けられるよう教育やトレーニングの機会を提供したり、長く働き続けられるようにサポートする(3.c)ことが目指されています。 

エチオピアの保健医療施設で手術の準備をする医師

世界保健機関(WHO)は、SDGsとユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC) [2] を達成するためには、最低でも人口1万人当たり44.5人の保健医療従事者が必要だとしています [3]。例えば、日本では、2022年時点で医師(1万人当たり約26人)、看護師と助産師(1万人当たり129人)合わせて1万人当たり約155人の保健医療従事者がいますが、最も貧しい国や地域では、医師の数は1万人あたりわずか3人、看護師と助産師は1万人当たり10人と、計13人しかおらず、WHOが定める基準にはまだ達していないのが現状です [4][5]。 

人材不足を解消するための取り組み

こうした危機的な保健医療従事者の不足に対応するため、保健健普及員が活躍している国や地域があります。例えば、アフリカのエチオピアでは、中学校を修了していることを条件に、地域の代表者が保健普及員として一年間のトレーニングを受け、村の保健クリニックで予防接種や産前産後の検診といった病気の予防や、マラリアの治療などを行っています。各村に2人ずつ配置された保健普及員は、エチオピア国内で4万人に上ります。 

このように、保健医療の専門家と保健普及員が協力し合い、人々が保健医療サービスを受けることができるように取り組んでいますが、WHOによると、開発途上国では2030年までに、約1,100万人の保健医療従事者が不足すると予測されており [6]、保健医療サービスの利用がますます制限されることが懸念されています。開発途上国では、こうした課題を解決するため、人材の育成や、労働条件の改善などを急ぐ必要があるとともに、日本を含む先進国も、資金提供や技術支援を通して、保健医療の人材不足の解消に貢献することが求められます。

の記事を書いた人:アドボカシー部グローバル政策提言チーム 島村由香


[1] 【Vol.3 保健・栄養】持続可能な開発目標(SDGs)から考える健康 – 世界目標達成のために  | あすのコンパス | セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン 保健 栄養 SDG2 SDG3 

[2] 【Vol.2 保健・栄養】すべての人に健康を-ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ達成のために- | あすのコンパス | セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン  ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ UHC 

[3] 16117-Health workforce requirements for universal health coverage and the Sustainable Development Goals _for Web 

[4] Medical doctors (per 10 000 population) 

[5] Nursing and midwifery personnel (per 10 000 population) 

[6] Health workforce  

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