2026.05.21 【紛争と人道支援】シリア危機とNGOによる支援 緊急・人道支援 この記事と特に関連が深い子どもの権利 ・第22条:難民の子ども(難民となって逃(のが)れている場合、特別な保護やサポートを受ける権利がある。) ・第38条:戦争からの保護(平和に生きる権利。紛争・戦争でたたかうことを強いられず、紛争・戦争に巻き込まれた場合には、保護される権利がある。) 皆さんは、シリア(正式名称:シリア・アラブ共和国)という国を知っていますか?中東に位置し、アラビア語を公用語とする国です。 2011年に国内で武力衝突が始まって以降、多くの子どもたちやその家族が、難民や国内避難民として国内外に避難しています。 シリアの場所(出典:日本ユニセフ協会) 各国の現状を踏まえて、セーブ・ザ・チルドレンが行っている人道支援を紹介するシリーズ。 1回目は、シリアの人道危機に焦点を当てて見ていきます。 [注] 紛争や自然災害などで影響を受けた人々や地域社会に対し、生きるために必要な支援(食料、医療、安全な場所など)を届ける活動を指します。セーブ・ザ・チルドレンは子ども支援専門の団体として、特に子どもたちのニーズに合ったサポートを提供しています。 シリアで起きている人道危機 2011年、アラブ諸国で人々が当時の政権に対して民主化を求める「アラブの春」という運動が起きました。 この運動はシリアにも広まり、国内では武装した勢力同士が激しく争う内戦へと発展しました。 内戦が長引くにつれ、多くの子どもたちやその家族が、住み慣れた家を離れて国内外へ逃れざるを得なくなりまし た。 また、戦闘の影響で教育や医療、インフラといった生活の基盤が崩れ去りました。 こうしたシリアの状況は、「21世紀最大の人道危機」と呼ばれていました。 2024年12月(がつ)に前政権が崩壊しましたが、移行期の中で状況は依然として不安定です。 2026年現在も、1,560万人以上の人々が人道支援を必要としており、また約700万の人々が元の家に戻れずに国内避難民として暮らしています。 冬を迎えたシリア北東部の国内避難民キャンプ。雪が降り、厳しい寒さに直面している。 子どもたちへの影響 何年にもわたる危機が続いたシリアでは、子どもたちが十分に教育を受けることができない状況が続いています。 今でも250万人の子どもたちが学校に通えておらず、160万人が学校を辞めざるを得ないおそれがあります。 また、食べ物が不足し、医療へのアクセスや安全な水も限られています。例えば、シリアの5歳未満の子どものうち、少なくとも65万人が慢性的な栄養不良に陥っていると言われています。 また、シリアでは戦闘の影響で地雷などの爆発物が多く残っています。こうした爆発物は、難民・国内避難民となった子どもたちやその家族が移動をする際に大きなリスクとなります。 避難を繰り返したり、暴力やストレスにさらされる中で、子どもたちの精神的な負担を少しでも和らげ、つらい出来事から回復できるよう、休息できる場所、厳しい冬を乗り越えるための毛布、きれいな水、こころのケアなど、生活を維持するためのサポートを提供することが急務となっています。 アマルさん(8歳)は両親ときょうだいとともに、シリア北西部のアレッポ郊外から避難を余儀なくされました。現在はシリア北東部の国内避難民キャンプで暮らしています。 セーブ・ザ・チルドレンはどのような支援を行っているの? セーブ・ザ・チルドレンは2012年から現在まで、シリア危機によって影響を受けた子どもや家族を中心に、1,100万人以上に対して支援を届けてきました。 最近では、現地パートナーとともに、緊急人道支援のニーズが最も高いアレッポやラッカを含むシリア北東部への支援にも力を入れています。以下は、その一部です。 日本からも、2013年に活動をはじめて、今まで7.5万人以上に心理社会的支援、子どもの保護、トイレの設置や飲料水の提供のための水・衛生支援、母子の栄養改善などのサポートを提供してきました(くわしくはこちら)。 人道支援の課題 セーブ・ザ・チルドレンをはじめとしたNGOや市民団体は、人道危機が続くシリアで支援を続けてきましたが、その中で、さまざまな課題にも直面しています。 1. 移動の制限やインフラへの被害 現地の治安はいまだに不安定で、夜間の外出禁止令や移動の制限が出されています。また、道路や橋、水道管などの重要なインフラが被害を受けており、水を確保したりすることが難しくなっています。 2. 残留する爆発物の危険 一部の地域では、不発弾などの爆発物が今も残っています。これが原因で、安全に移動したり、必要な場所にたどり着いたりすることが困難になっています。 3. 深刻な資金不足と支援の縮小 世界的に支援のための資金が不足しており、国際的な援助も各国の状況によって縮小されています。資金が足りないために、命を守るための大切な活動を中止せざるを得なくなっている現場もあります。 まとめ 長きにわたって人道危機が続くシリアには、困難な状況に置かれ、未来への不安を抱えている人々がたくさんいます。 その中で、私たちにできることはあるのでしょうか。 まずは、シリアの難民・国内避難民の現状について知り、関心を持ち続けることが大切です。 市民からの関心が高ければ高いほど、日本政府や世界のリーダーたちもその課題を取り上げる必要性を感じたり、課題を解決するための予算を増やしやすくなったりします。 ぜひ、シリアの状況について学んだことを周りの人に話してみてください。 また、支援を行っている団体の活動を知り、募金をすることも力強いアクションです。 セーブ・ザ・チルドレンは、シリア国内外で避難を強いられた人々が平和で健康的な生活を取り戻せるよう、支援を続けています。こうした活動は、多くの方々の寄付で成り立っています。 募金活動を通して、皆さんのアクションが世界の子どもたちを守ることにつながります。以下のページで、学校などで取り組める募金活動のアイディアやツールを紹介しているので、関心がある人はまず活動ハンドブックをダウンロードしてみてください。 募金活動を知ろう! 世界中の子どもたちの権利が守られるよう、一緒に学び、声を上げていきましょう!考えてみよう もしもあなたの国で紛争や戦争が起こり、あなた自身がある日突然難民になったら、どのように感じるでしょうか?また、どんなことに困るでしょう? アドボカシー部社会啓発チーム インターン 出典 Syria Country Office (February 2026), Syria Humanitarian Crisis Communications Pack セーブ・ザ・チルドレン(2021)、「シリア難民の現状は?私たちが日本にいながらできることは?」