2025.04.17 【難民問題 Vol.1】ロヒンギャ難民とは? 緊急・人道支援子どもの保護 ロヒンギャ難民とは? 皆さんは、ロヒンギャ難民の問題について、知っていますか? これは、ミャンマーからバングラデシュをはじめとする周辺国に避難しなければならなくなったロヒンギャの人々の人権をめぐる国際問題です。 2017年8月(がつ)、多くのロヒンギャの人たちが故郷から避難しましたが、現在でもこの問題は解決していません。また、2021年2月(がつ)以降、ミャンマー国内の状況がさらに悪化したことで、ロヒンギャ難民の問題はさらに複雑になっています。 この記事では、ロヒンギャ難民の問題とロヒンギャの人々の現状について紹介していきます。 2023年3月にバングラデシュ・コックスバザールの難民キャンプ内で起きた火事から避難するロヒンギャの人々 ロヒンギャ難民をめぐる現状 ロヒンギャとは、ミャンマーの西部ラカイン州に多く住む少数派イスラム教徒です。ロヒンギャへの迫害は長きにわたり続いていますが、世界の関心は決して高くありません。 2017年8月(がつ)25日には、ラカイン州北部で大規模な暴力が起こりました。このため、多くのロヒンギャの人々がバングラデシュに避難しました。その多くは現在、バングラデシュの南東部にあるコックスバザール県で避難生活を送っています。 2024年12月(がつ)末時点で、105万5,520人ものロヒンギャ難民がコックスバザールの33難民キャンプにいます。そのうち半数以上(約52%)は子どもです[1][2]。 アジア最大の難民キャンプが設置されているバングラデシュのコックスバザール県。2017年8月に、隣国ミャンマー北部のラカイン州から70万人以上のロヒンギャの人々が逃れてきました 大勢のロヒンギャの人たちが周辺国などへ避難してから7年経った2025年現在も、ロヒンギャ難民がミャンマーに帰れる見込みは立っていません。 最も多くのロヒンギャ難民が住むバングラデシュでは、2018年と2019年に難民をミャンマーに帰れるようにする計画がありました。しかし、ミャンマーはまだ安全ではなく、“持続的に”平和な環境が得られる状況ではないため、誰も帰りませんでした[3]。 ※ここでの“持続的に”平和な環境とは、“これからもずっと”平和な環境が保障されていることを意味しています。 ロヒンギャの子どもや家族は、難民キャンプで小さなシェルター(簡易住居)に住み、困難な生活をしています。みんなが安心して、幸せに暮らせるようにするためには、問題を根本的に解決していくことも必要ですが、今いるキャンプの生活をもっと良くすることも大切です。 アスマさんと、息子のカリムさん、孫娘のニシャットさん(17ヶ月(かげつ))。アスマさんは暴力から逃げる途中の事故で足を骨折しました。バングラデシュに到着した後、ほぼ1年動けない状態でしたが、リハビリテーションサービスやセーブ・ザ・チルドレンから支援された杖で、今では補助なしで歩けるようになりました。アスマさんは現在キャンプ内の障害者支援委員会のメンバーで、障害者の権利についての啓発活動を手助けしています。写真はロヒンギャ難民キャンプ内のシェルターにて しかし、ロヒンギャ難民に対する国際社会の関心は少しずつ薄れ、支援も減ってきています。 ロヒンギャ難民キャンプで3人の子どもと一緒に暮らすアミールさんは、この4月(がつ)から食べ物をもらえる量が減ってしまうかもしれないこと、もしそうなれば、家族が生きるために、子どもたちを危険にさらす人が増えるかもしれないと、とても心配しています。 「仕事がない人たちは、強いストレスを感じて病気になることもあります。お金がなくて困った家族が、娘を悪い人に売ってしまうこともあるかもしれません。」 「お金に困った家族は、10代の息子をキャンプの外で働かせようとするでしょう。中には仕事を探すために、危険を承知で海を渡ってマレーシアへ行こうとする人もいるかもしれません。」 食べ物の支援が減る日が近づくにつれ、キャンプでは「これからどうやって生きていけばいいのか」と不安な気持ちになる人が増えています[3]。 薄れる関心・減らされる支援 ロヒンギャ難民の支援について、これまでは1人あたり1ヶ月(かげつ)12.50ドル(約1,850円)分の食料を国際機関やNGOなどの支援団体が配布していました。しかし、2025年3月に6.00ドル(約900円)に減る見込みが示されました。 国際社会の協力により、食料支援の削減はなんとか回避することができましたが、ロヒンギャ難民はいつ同じような問題に直面してもおかしくない状況に置かれています。 コックスバザールの難民キャンプで暮らしている人のうち、50万人以上が子どもですが、5歳未満の子どもの15%以上が栄養不良の状態にあると言われています。 これ以上悪化すると命の危険もあるとして、ユニセフは「すぐに助けなければならない状況だ」と警告しています。 娘たち(3歳と1歳)にご飯を食べさせるアレファさん。夫と母方の家族とともにコックスバザールの難民キャンプで暮らしています。セーブ・ザ・チルドレンの食料支援プログラムのサポートを受けています 危険な船旅に出る人たち 昨年、7,800人以上のロヒンギャ難民が、よりよい暮らしを求めて危険な船旅に出ました。その数は、2023年と比べて80%も増えています。 この船旅はとても危険なもので、難民たちは人身売買業者(注)にだまされ、海の上でひどい目にあうことがあります。特に10月(がつ)から4月(がつ)の間は、海が穏やかで船が出やすいため、多くの人が古い木造ボートを使ってマレーシアなどへ行こうとします。 (注)人身売買業者とは、お金をもうけるために、人をだましたり、強制的に連れ去ったりして、働かせたり売ったりする人たちのことです。 インドネシアまで渡ったロヒンギャ難民の子どもたちが壁に描いたボートの絵 なぜロヒンギャの人たちはキャンプを出ようとするの? 難民キャンプの中にいても、決して安全とは言えません。 難民キャンプの中では、武装したグループが子どもを誘拐したり、身代金(みのしろきん)を要求したりする事件がたびたび起きています。 また、大きな火事やモンスーン(大雨による洪水)、地滑りなどの自然災害も多く、キャンプにいること自体が危険な場合もあります。さらに、先行きが見えないことなどによるストレスから逃れるために薬物を乱用する人も増えています。 竹やビニール、ロープでできたシェルター(簡易住居)に大人数(おおにんずう)で住んでいるため、プライバシーを保つことも難しい環境です。特に10代の少女たちにとって、こうした環境の中ではなかなか安心して過ごすことはできません。 そのため、多くの人がなんとかしてここから抜け出したいと考えているのです。 2023年8月(がつ)8日、ロヒンギャ難民キャンプで大雨によって、子どもとその母親が土砂崩れで亡くなりました。数日間(すうじつかん)の豪雨は50万人以上の難民の子どもや受け入れコミュニティに影響を与え、多くのシェルターやその他の施設が壊れました ロヒンギャ難民キャンプをおそった大規模な火災の後に周囲を眺める子どもの様子 ロヒンギャ難民を助けるためには、もっと多くの支援が必要です。 次の記事では、コックスバザールの難民キャンプで暮らすロヒンギャの人々の食事や暮らしなどについてみていきます。 この記事を書いた人:アドボカシー部インターン 吉田莉々(りり) [1] 朝日with Planet 『「ロヒンギャ難民キャンプで問う「教育の意味」 日本の教員が訪問』 2025.03.17 [2] reliefweb, “UNHCR Bangladesh Operational Update”, December 2024. [3] セーブ・ザ・チルドレン 「ロヒンギャ難民問題とは何か?」 [4] セーブ・ザ・チルドレン 「【バングラデシュ】食料支援額の削減が迫るなか、世界最大の難民居住地に暮らすロヒンギャ難民の家族は危機的状況に」 2025.03.24