2026.05.12 【紛争と人道支援】人道危機の中で子どもたちが望む支援は? 緊急・人道支援教育 この記事と特に関連が深い子どもの権利・第28条:教育を受ける権利・第29条:教育の目的 大人たちが始めた戦争の中で、子どもたちは多くの代償を払わされています。繰り返される空爆や戦闘の中で、もっとも深刻な影響を受けている当事者の子どもたちは、どんな支援が必要だと考えているのでしょうか? 子どもの権利条約の前文[1]にもあるように、子どもやユースは発達の途中にあり、こころや体、また社会的な面においても、大人とは異なるニーズ(必要としていること)を持っています。それにもかかわらず、人道支援[注]においては長い間(あいだ)、何かを決めるときに子どもやユースの意見を取り入れたり、意義のある子ども参加が十分に行われてきたとは言えません。 [注] 人道支援とは、紛争や自然災害などで影響を受けた人々や地域社会に対し、生きるために必要な支援(食料、医療、安全な場所など)を届ける活動を指します。 このような状況を受けて、セーブ・ザ・チルドレンは子どもやユースの声を人道支援にもっと反映させるために、プラン・インターナショナル、ノルウェー難民評議会(NRC)と一緒にある調査を行いました。 この調査では、子どもやユースが人道危機の中で「何を大切に思っているか」、「実際にどんな生活を送っているか」を、支援の内容を決める際にきちんと活かせているかどうかを調べました。これによって、人道支援の現場で子どもやユースに対して「支援として行われていること」と、「実際に必要とされていること」の間(あいだ)にずれがないかなどを明らかにしています。 “Put Us at the Centre(私たちを中心に据えて)” セーブ・ザ・チルドレンなどが実施した緊急人道支援において子ども・ユースが望むものについて調査した報告書 紛争下でも子ども・ユースが最も望んでいるのは「教育」 この調査では、すでに公開されている子どもへの聞き取り調査に関する文献調査(報告書や論文などを読んで分析すること)を行ったり、またマリ、ナイジェリア、ウガンダ、ウクライナの4ヶ国(かこく)で直接子ども・ユースへのインタビューも実施しました。インタビューには、合計で451人が参加しました[2]。 その結果、人道支援の中で、子どもやユースが最も望んでいるのは教育だということが分かりました。文献調査の92%で、子ども・ユースは教育が一番大切だと考えていることを示しています。この傾向は、子ども・ユースへのインタビューでも同じことが確認されました[3]。 人道支援の中でも、子どもたちにとって教育がもっとも大切だと子ども自身が考える理由として挙げられたのは、教育を受けることにより生計を立て、収入を得て安定した将来を築くことができるからです。具体的には、子どもたちはノンフォーマル教育[注]や技術・職業訓練を受けることを望んでいます。 [注]ノンフォーマル教育(non formal education)とは、あらゆる理由で教育を十分に受けられていない人のためにつくられた、制度化された学校教育以外の場で学習することを意味します。国内外を問わず、学校以外での組織的な学び全般を「ノンフォーマル教育」と呼びますが、海外の文脈では、就学しない、あるいは就学年次に就学できなかった子どもや若者、就学機会が十分与えられなかった成人が読み書きや計算などの基礎教育を習得するためのものから、生きていくために必要なライフスキルや職業訓練の習得など、生活の質を向上させるためのものを指します。(出典:JICA2023) 実はこの傾向は、2019年にセーブ・ザ・チルドレンが実施した調査から変わっていません[4]。 紛争などの影響を受けている当事者の子ども・ユースは、一貫して教育を重視しています。人道危機の中であってもお金や食べ物・水といったすぐに必要となるものよりも教育がより選ばれているのは、子ども・ユース自身が教育の大切さを実感しているからだと言えるでしょう。 ナイジェリアのクロスリバー州の教室の様子 足りない教育資金 -後回しにされがちな未来への投資- しかしながら、教育は人道支援の中でも後回しにされがちです。実際に、人道支援の97%は教育以外に充てられています。教育分野に割り当てられるお金は、全体の3%未満の状況です。 2025年、人道支援に対する大きな資金削減がありましたが、その中でも教育分野のお金は必要な金額に対して33%も削減されてしまいました。これは食料、水・衛生、保健などと比べても、より深刻な状況です[5]。 このように、国際社会による支援の優先順位と、現地で暮らす子どもたちが求めていることの間(あいだ)にはギャップ(ずれ)が存在しています。 子どもたちの想い -危機下での教育の重要性- 「学校を建て直したい」、「大好きな学びを続けたい」・・・ シリア・イドリブ出身のアリさん*(10歳)は、こう話します。「学校が壊されてボロボロになっているのを見て、とても悲しくなりました。私は自分の学校が大好きなので、学校を建て直して、前よりももっと良くしたいです。将来は困っている人を助け、自分の国のために役に立つ医者になりたいです。」[6] ナイジェリア・ボルノ州のキャリヤムさん*(12歳)は、洪水の影響により、家にあった教材や制服が流され、通(かよ)っていた学校も破壊されてしまいました。「学校に行けなくなって、とても残念に思います。遅れた分を取り戻せるのかが心配です。私は学ぶことが大好きで、好きな科目は数学、科学、ビジネス、そして保健体育でした」と語ります[7]。 *プライバシー保護のため名前は変更されています。 人道支援では、食べ物や水など、生き延びるための支援が最優先事項だと考えられがちです。しかし、子どもたちにとって、学校や学びの場はそれらと同じぐらい大事で、危機的な状況の中でも、数少ない安心・安全を提供してくれる大切な場所、そして将来を思い描くために必要不可欠な場所です。 教育分野への支援が減らされている中、危機下における教育の重要性について、一緒に考えてみましょう。 考えてみよう あなたにとって、学校とはどんな場所ですか?また、もし自分がある日突然紛争などに巻き込まれ、支援が必要になった場合、あなたは支援してくれる人に対してどういう風(ふう)に関わってほしいと思うでしょうか。少し想像してみましょう。 紛争に関する記事をまとめて読む:Vol.1 【紛争とは?】 紛争の原因Vol.2 【紛争とは?】 世界で紛争が起きている地域Vol.3 【紛争とは?】 戦争や内戦が子どもに及ぼす影響Vol.4 【紛争とは?】 紛争の影響を受けた人々のための支援活動~私たちにできること~ アドボカシー部社会啓発チーム インターン [1] 外務省、「児童の権利に関する条約」全文 [2] セーブ・ザ・チルドレンと他団体が一緒に行った調査では、27ヶ国(かこく)に関する24本の公開聞き取り報告書を分析し、6ヶ国(かこく)の人道支援計画や資金の流れを子どもたちの声と比べました。さらに、マリ、ナイジェリア、ウガンダ、ウクライナの4ヶ国(かこく)で直接聞き取りを行い、61回のグループ・ディスカッションに451人が参加しました。参加者は、8〜12歳が151人、13〜17歳が167人、18〜24歳が133人でした。人数の内訳は、ジェンダーのバランスに配慮して実施しています。 [3] NRC, Norwegian Refugee Council, Plan International, Save the Children International (2026), ““Put Us at the Centre” – What Children and Young People in Humanitarian Crises Asked For – and the Decisions that Followed“. [4] [6] Save the Children (2019), “CHILDREN IN CRISIS WANT EDUCATION MORE THAN MONEY, FOOD OR WATER”. [5] Global Education Cluster (2025), “Impact of Re-prioritization on EiE”. [7] Save the Children (2024), “2024 IN REVIEW – ONE IN THREE CHILDREN IN CONFLICT AND FRAGILE COUNTRIES OUT OF SCHOOL – NEW ANALYSIS”.