自分と社会・世界 ISSUES

2025.12.03

家族と離れて避難するって、どういうこと?

子どもの保護

あるアフリカの国に、14歳の女の子がいました。

その日、両親は出かけていて、女の子は6歳の妹と家で留守番をしていました。

お昼ごろ、外から大きな音と叫び声が聞こえ、近所のおとなが「危ないから逃げるんだ!」と叫びました。


女の子は、とっさに妹の手をにぎり、不安な気持ちのまま、人の流れに合わせて走り始めました。

あわてて逃げる途中で妹は転び、腕を強く打ってしまいます。


泣き出した妹を支えながら、女の子は「向こうに着いたら、きっと誰かがみてくれるよ」と声をかけて歩き続けました。

何日も歩いたあと、二人は国境を越え、隣の国の避難所にたどり着きました。


そこで支援スタッフに出会い、妹は腕の手当てをしてもらいました。

そのとき女の子は、自分たちが「家族と離れ離れになった子ども」として登録されることを知ります。

世界には、この姉妹のように、避難の途中で家族とはぐれてしまう子どもたちがたくさんいます。

この記事では、そんな子どもたちがどんな状況に置かれているのか、どう支えていくことが大切かを、一緒に考えていきたいと思います。

UASCって、どんな子どものこと?

避難先のテントに住む姉妹(ラワンさん2歳とアビールさん3歳)
避難先のテントに住む姉妹(ラワンさん2歳・アビールさん3歳)

家族や保護者などのおとなと一緒にいない、または離れ離れになっている子どものことを、

英語では UASC(Unaccompanied and Separated Children) と呼ぶことがあります[注]。

ここでは、こうした子どもたちを「UASC」と呼ぶことにします。

 

[注]英語の解説

・Unaccompanied:同伴者のない
・Separated:離れ離れになって(別々になって)

 

たとえば、次のような子どもたちがUASCにあてはまります[1] 。

  • 親は生きているけれど、避難の途中の混乱ではぐれてしまい、一人で救助された子ども
  • 親とは別々に避難しているけれど、近所の人や親戚に付き添われている子ども
  • 両親を亡くし、身近に世話をしてくれるおとながいない子ども

 

ポイントは、「そばでその子を安定して世話してくれるおとながいるかどうか」 です。
たとえ両親を亡くしていても、安心して暮らせる里親家庭などがあり、毎日のごはんや学校、体調のことまできちんと見てくれるおとながいれば、UASCにはあてはまりません。

子どもの権利条約 第18条:子どもは、まず親・保護者に育てられる権利があります。そのために、子どもを育てる責任がある親・保護者を国がサポートします。
子どもの権利条約 第18条:子どもは、まず親・保護者に育てられる権利があります。そのために、子どもを育てる責任がある親・保護者を国がサポートします。

家族と離れると、どんなことが起こるの?

もし、自分が突然家族とはぐれてしまったら――

知らない国で、頼れるおとながいなかったら――

 


どんな気持ちになるか、少しだけ想像してみてください。

家族や身近なおとながいない子どもは、次のような危険にさらされやすくなります。

  • 不安、恐怖、悲しみで眠れなくなったり、気持ちが不安定になる
  • 身分証を所持していないため、病院や学校に行きにくい
    (身分証とは、たとえばパスポート、マイナンバーカード、健康保険証や学生証など、「自分が何者であるか」を証明できる書類のことです。)
  • 学校に通えず、読み書きや計算を学ぶ機会を失ってしまう
  • 生活のために危険な仕事をさせられる

こうした影響は、子ども時代だけでなく、おとなになってからの生活にも関わってきます。

UASCを支えるための3つのポイント

では、家族と離れ離れになった子どもたちを、どのように支えたらよいでしょうか。

ここでは、大事な3つのポイントを紹介します[2]。

1.「どんな子が、どこにいるか」をきちんと把握すること

名前や年齢、出身地などを聞いて、安全を確保したうえで、行政機関や国連の難民を支援する機関に登録します。

そうすることで、食べ物や水の配布、病院、学校などにつなげやすくなり、「行方不明のまま」になってしまう危険も減らすことができます。

2.一人ひとりに合わせた支援(ケースマネジメント) を行うこと

安全な場所で眠れているか、子どもだけで暮らしていないか、こころのケアが必要かなど、一人ひとりの状況を聞きながら、

「子どもにとって一番良いことは何か」を考え、さまざまな関係者と協力して支援を行います。

 

ケースマネジメントについて分かりやすく解説した記事はこちら:一人ひとりに合わせた支援ってなに?子どもを守るケースマネジメント | あすのコンパス | セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン

3.家族との再会や、家庭的な環境で暮らせる場所を探すこと

家族を探したり、どうしても見つからない場合には、里親家庭など、家のような環境を用意します。家族とはぐれたままテントで眠るしかなかった子どもが、「ただいま」と言える場所を持てるようにするための取り組みです。

子どもの権利条約 第20条:子どもは、家庭的な環境で育つ権利があります。それができない場合は、里親家庭(さとおやかてい)や養子縁組(ようしえんぐみ)、児童養護施設(じどうようごしせつ)で暮らすなど、別の家庭的環境を得る権利があります。
子どもの権利条約 第20条:子どもは、家庭的な環境で育つ権利があります。それができない場合は、里親家庭(さとおやかてい)や養子縁組(ようしえんぐみ)、児童養護施設(じどうようごしせつ)で暮らすなど、別の家庭的環境を得る権利があります。

UASCと「子どもの権利条約」

UASCを支える上で子どもの権利とのつながりを考えることも大切です。特に直結しているのは、次の二つの権利です[3]。

  • 親や保護者に育てられる権利(第18条)

「子どもは、基本的には親や保護者に育てられることが大切で、国はその子育てを支えるべきだ」という考え方を示しています。

ところが、UASCの子どもたちは、戦争や災害からの避難などの理由で、「親や保護者と一緒に暮らす」という前提そのものが崩れてしまった子どもたちです。

そのため、第18条で大切だとされている「子どもを育て、守る役割」を状況に応じて国や社会、支援団体が協力して担い、家庭的な環境や子どもを守るしくみを整えていくことが重要です。

  • 家庭的な環境で育つ権利(第20条)

「親と暮らせない子どもにも、家庭に近いあたたかい環境で育つ権利がある」と定めています。

そのため、家族と再び一緒に暮らすことがむずかしいUASCに対しては、

  ‐里親家庭で暮らせるようにする

  ‐少人数で生活するグループホームを用意する

など、できるだけ家庭に近い場所で生活できるようにすることが大切になります。

 

家族と離れ離れになった子どもたちは、この二つの権利が同時におびやかされやすい立場にあります。

だからこそ、UASCへの支援は、「子どもの権利を取り戻すための取り組み」 でもあるのです。

最後に

この記事のはじめに出てきた姉妹のような子どもたちは、遠い物語の中の話ではありません。
例えば、セーブ・ザ・チルドレンが活動するウガンダにも、隣国の南スーダンから家族とはぐれたまま避難してきた子どもたちがいます。

 

世界には家族と離れ離れになり、知らない国で必死に生きようとしている子どもたちがいます。
まずは、「そういう子どもたちがいる」ということを知ることが、社会や自分たちにできることを考えるうえでの第一歩になります。

 

<参考>

おとな向けにくわしく書いた記事はこちら:【子どもの保護コラム】家族と離れ離れになる子どもたちを守るには

 

この記事を書いた人:海外事業部 子どもの保護グループ

 


[1] Inter-agency Working Group on Unaccompanied and Separated Children, Inter-agency Guiding Principles on Unaccompanied and Separated Children(2004)
[2] Alliance for Child Protection in Humanitarian Action, Field handbook on Unaccompanied and Separated Children (2017)
[3] 子どもの権利の一覧:セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン 「子どもたちにはどんな権利があるの?」

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