自分と社会・世界 ISSUES

2025.11.05

一人ひとりに合わせた支援ってなに?子どもを守るケースマネジメント

子どもの保護

家でつらい思いをしている

まわりの人からひどいことをされた

災害や紛争で家族と離れてしまった

 

そんなとき、子ども一人ひとりに合わせて支援するしくみが「ケースマネジメント」です。すべての子どもが安心して暮らせるように、大人たちが連携して取り組んでいます。

これまでのあすのコンパスの記事では、「困ったときは相談窓口へ相談してね」とお伝えしてきました。この記事では、相談を受けた後に大人たちはどのように子どもたちの声に向き合っているのかをお伝えします。

一人ひとりに合わせた支援 「ケースマネジメント」とは

子ども一人ひとりに合わせて支援をするとは、どういうことでしょうか?

困っている子どもは、それぞれ理由や状況がちがいます。

たとえば、ある子どもには「こころのケア」が必要かもしれません。別の子どもには「家族との関係を改善する支援」が必要かもしれません。また、学校に通えなくなってしまった子どもには「学びを続けるサポート」、安全な場所で暮らせない子どもには「安心して過ごせる居場所」が必要になることもあります。

困っている子ども一人ひとりに合わせて、どのような助けが必要かを考えて、支援するしくみが「ケースマネジメント」です。

子どもの権利条約 第20条:子どもは、家庭的な環境で育つ権利があります。それができない場合は、里親家庭や養子縁組、児童養護施設で暮らすなど、別の家庭的環境を得る権利があります。
子どもの権利条約 第20条:子どもは、家庭的な環境で育つ権利があります。それができない場合は、里親家庭(さとおやかてい)や養子縁組(ようしえんぐみ)、児童養護施設(じどうようごしせつ)で暮らすなど、別の家庭的環境を得る権利があります。

ケースマネジメントの6つのステップ

ケースマネジメントには大きく6つのステップがあります[1]。

① 困っている子どもを見つける

困っている子どもから相談窓口へ直接連絡があったり、先生や近所の人から「助けを必要としているかもしれない子どもがいます」と相談の連絡が入ります。

② 子どもの状況をよく知る

相談窓口の相談員が、子どもがどんなことで困っているのか、どのような助けが必要か、子どもや家族との話し合いを通して、状況を理解します。

③ 助ける方法を考える

こころのケア、安全な場所での一時的保護、家族との対話、司法・医療などの専門的な支援など、支援が必要な子どもにとって「最もよいこと」は何か、子ども、家族と一緒に考えながら、支援内容を決定します。

④ 支援内容を実行する

いろいろな専門の人が協力して、子どもを支えます。

⑤ その後も見守る

困っていることがなくなったか、また問題が起きていないかを継続的に確認します。

⑥ 支援を終了する

困っていることがなくなったと確認できたら、子ども本人の気持ちも聞いて支援の終了を判断します。

子どもの権利条約 第3条:国や大人から、その子どもにとって最も良いことを優先して考えてもらう権利があります。
子どもの権利条約 第3条:国や大人から、その子どもにとって最も良いことを優先して考えてもらう権利があります。

子どもの権利とのつながり

ケースマネジメントは、子どもの権利とも深く関わっています [2]。

子どもの権利条約の第3条 「子どもの最善の利益」でも保障されているように、子どもには「子どもにとって最も良いこと」を大人に考えてもらう権利があります。ケースマネジメントでは、その「子どもにとって最も良いこと」を子どもや家族と一緒に考えて、それぞれの子どもに合わせた支援を組み立てていきます。

こうした支援は、すべての子どもに保障されている「子どもの権利」の実現につながっています。

例えば、暴力や虐待から守られること、体やこころの発達のために必要な支援を受けること、休むこと、遊ぶこと、自分の意見を尊重してもらうこと――これらはすべて、子どもの権利です。

これらの権利がきちんと守られるよう、大人たちが連携して、子ども一人ひとりに寄り添いながら、それぞれに合った支援を提供できるよう取り組んでいます。

「気づき」が子どもを守る大きな力に

相談窓口は困ったことを話せる場所ですが、自分から助けを求めることが難しい子どももいます。だからこそ、子ども自身が困っていることに気づくこと、そして周囲の大人がそのサインに気づくことがとても大切です。

先生やスクールカウンセラー、地域の病院、保健師、子ども支援のボランティア、警察など、さまざまな立場の大人たちが子どもたちを見守り、気になることがあった時に連携できるような関係づくりを意識しています。

皆さんや周りのお友だちに困っていることがあり、周囲の大人へ相談しづらいときは、地域の相談窓口[3]へ連絡してみてください。上に書いたように、相談窓口では、いろいろな専門を持つ人が連携しながら、皆さんにとって適切な支援を考えます。

 

私や友だちのこころの健康を守るためのヒントもぜひ参照してください。

セーブ・ザ・チルドレンが実施するケースマネジメント

セーブ・ザ・チルドレンは、相談窓口や体制が整っていないことが多い海外の国々で、現地の公務員地域で活動するNGOなどと連携して、ケースマネジメントを実施しています。

貧しいために幼くして結婚しなくてはいけなくなってしまった、長い時間きつい仕事をしなければいけない、紛争から逃げるときに親とはぐれてしまった、家で虐待されているなど、子どもによって状況はさまざまです。

ケースマネジメントを通して、子どもたちが守られていると感じられるように、状況が改善したと感じられるように、そして希望を持てるように、一人ひとりに寄り添った支援を提供しています。

最後に

「ケースマネジメント」は、困っている子どもを一人ひとりに合った方法で支援するしくみです。

家や学校、まわりの人とのことでつらい思いをしているとき、子どもたちの話を聞いて、どんな助けが必要かを一緒に考えてくれる大人たちがいます。

困ったときは、ひとりで抱え込まず、相談することが大切です。

支援を必要とする子どもが、安心して過ごせるように、さまざまな立場の人たちが協力していることをこころにとめておいてください。

 

<参考>

大人向けにくわしく書いた記事はこちら:
ケースマネジメントとは?―子ども一人ひとりに合わせた支援のかたち―

 

この記事を書いた人:海外事業部 子どもの保護エキスパート 宮脇麻奈

 


[1] Alliance for Child Protection in Humanitarian Action 「Interagency Child Protection Case Management Guidelines (子どもの保護のケースマネジメントガイドライン)」(英語)
[2] 子どもの権利の一覧:セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン 「子どもたちにはどんな権利があるの?」
[3] 相談窓口一覧:セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン「困ったときの相談窓口

この記事はいかがでしたか?

一覧へ戻る