2025.08.12 Vol.3【気候変動】日本:気候危機がもたらす学校生活への影響 防災・気候変動 2024年、世界85ヶ国で熱波や台風、大規模な洪水といった「異常気象」によって、少なくとも2億4,200万人の生徒たちの学校生活に影響がありました[1]。 この大きな原因の一つが、地球温暖化です。地球全体の平均気温は、産業革命が始まる前と比べて、すでに1.55℃も高くなっています[2]。 【気候変動】シリーズVol.3では、気候変動の波が私たちの住む日本にどのような影響を与えているのかについて考えてみましょう。また、世界中の子どもたちの状況と同じように、日本での学校生活にも起きているさまざまな変化も見ていきましょう。 暑くなる地球 日本の「暑さ」は、世界の「危機」とつながっています 「昔の夏は、こんなに暑くなかった」とおとなが話すのを聞いたことはありませんか? 実際に、2024年の日本の平均気温は、基準となる気温と比べて +1.55℃ となり、統計を取り始めた1898年以降、最も暑い年になりました[3]。 また、長い目で見ても、日本の年平均気温は100年あたり1.35℃のペースで上昇を続けています[4]。 このような気温の上昇が、実は大雨や台風の増加にも関係しています。 空気が暖かくなると、より多くの水蒸気を含むことができるようになります。これが、ゲリラ豪雨のような短時間で降る激しい雨や、勢力の強い台風のエネルギー源となります。 ユニセフの報告書によると、日本では2024年だけで熱帯低気圧(台風)をはじめとして気候関連の理由で100万人以上の生徒が学校生活に影響を受けました[5]。 台風や大雨によって学校が水に浸かってしまえば、授業が再開できなくなったり、通学路を通れなくなったりします。気候変動による災害などによって、日本や世界の多くの子どもたちが当たり前の学校生活を送れなくなっています。 気候変動と増加する自然災害 じりじりと迫る「暑さ」そのものの脅威 そしてもちろん、気温の上昇は「暑さ」そのものとして、私たちの学校生活に直接襲いかかります。 うだるような暑さの中で、授業に集中するのは難しいですね。近年の研究は、教室の暑さが成績に直接影響することを示しています。 例えば、アメリカのある研究では、テストを受ける日の気温が26℃を超えると、数学の点数がはっきりと下がり始めることが分かりました[6]。 中国の調査では、試験当日の気温が2℃上昇するごとに、大学入試における生徒の得点率が0.68%低下することが示されました[7]。 さらに、影響はテストの当日だけにとどまりません。大学入試の前年「暑い日」が多かった生徒ほど、本番の試験の点数が低くなるというデータもあります。これは、暑い教室では、日々の授業で学ぶべき内容が身についていない、ということを意味しているのかもしれません[8]。 このように、気候変動による気温上昇は子どもたちの学習に影響を与えていることがわかります。 当然、熱中症のリスクも深刻です。環境省は、熱中症を防ぐための「暑さ指数(WBGT)」が31以上(気温でおよそ35℃以上)の場合、運動を原則中止するように呼びかけています。 このため、夏の部活動が制限されたり、体育の授業ができなくなったりする日が増えています。 文部科学省の調査では、公立小中学校の普通教室のエアコン設置率は95%を超えましたが、体育館はわずか15.3%に留まっています[9]。涼しい教室から一歩出れば、そこには危険な暑さが待っています。 未来のために、私たちにできること ここまで見てきたように、気候変動は、遠い国の話でも、ずっと未来の話でもありません。私たちの健康、学習の機会、そして大切な学校での思い出に、大きく関わる現実の問題です。 では、私たちに何ができるでしょうか? 知る・話す:気候変動について知り、家族や友達とこの記事で知ったことについて話してみましょう。クラスや委員会で、学校や家でできる暑さ対策や省エネについて話してみることもできます。 暮らしを見直す: 一人ひとりがエネルギーや資源無駄づかいを減らし、物を大切に使うことも、地球温暖化の進行を遅らせるための大切な一歩です。 声を上げ、届けること: 個人の力だけでは限界があると感じるかもしれません。だからこそ、私たちの考えを社会や政治に届けることも重要です。例えば、気候変動問題に真剣に取り組んでいる地域の政治家に関心を持ったり、若者が主催する環境イベントや活動に参加して意見を表明したりすることも、未来を変えるための活動です。 この記事を書いた人:アドボカシー部インターン ハギヤユカリ [1] UNICEF. (2025). Learning Interrupted: Global Snapshot of Climate-Related School Disruptions in 2024.[2] Copernicus. (2024). Copernicus climate change service[3] 国連広報センター. 2024年は史上最も暑い年に ― 国連の気象機関が発表(UN News 記事・日本語訳). 2025.1.21.[4] 「気候変動」気象庁[5] UNICEF. (2025). Learning Interrupted: Global Snapshot of Climate-Related School Disruptions in 2024.[6] Graff Zivin, J. S. G., Hsiang, S. & Neidell, M. Temperature and Human Capital in the Short- and Long-Run Working Paper 21157 (NBER, 2015)[7] Zhang, X., Chen, X. & Zhang, X. Temperature and Low-Stakes Cognitive Performance Discussion Paper No. 15972 (IZA, 2023).[8] Cho, H. The effects of summer heat on academic achievement: a cohort analysis. J. Environ. Econ. Manage. 83, 185–196 (2017).[9] Hino, Y. (2023, August 16). In Japan’s sweltering classrooms, students and teachers battle the heat. The Japan Times.