2026.03.02 Vol.3「子どもの権利条約」報告審査プロセスにおける子ども参加〜モンゴル編〜 教育 この記事と特に関連が深い子どもの権利・第12条「意見を表す権利」(自分に関わるすべてのことについて意見を聴かれ、その意思を大切にされる権利) ・第13条「表現の自由」(さまざまな方法で情報や考えを得て、自由に伝えたり表現したりする権利) 前回の記事では、アイルランドの子どもたちがどのように「子どもの権利条約」の報告審査プロセスに参加しているかを取り上げました。今回の記事では、モンゴルの事例を見ていきます! ◎そもそも各国が「子どもの権利条約」を守っているかどうかって、どのような仕組みでチェックされているの?という点については、こちらの記事をお読みください。 モンゴルの報告審査プロセスにおける子ども参加 モンゴルでは、子どもたちが中心となって国内の権利の状況について調査や分析を行い、2015年に“For the Rights of All Children”という報告書が作成されました。10年以上前の情報になりますが、子どもたちがどのように参加し、またどのようなことを課題に感じていたかが参考になります。 報告書を作るにあたって、セーブ・ザ・チルドレンのような国際NGOや、Child for Child(チャイルド・フォー・チャイルド)[注]という、子どものための子どもによるNGOなどがサポートを提供しました。 [注] Child for Childは、2009年に27人の子どもたちが集まり、「保護クラブ」を立ち上げたことが始まりでした。モンゴルの子どもたちの権利を守るためには何が必要かといった調査を、子どもたちで行い、市場やゴミ山、貧困層の居住区、孤児院、警察署などで多くの子どもたちへインタビューを実施しました。翌年の2010年には、NGOとして国から認定を受けました。 報告書“For the Rights of All Children”(2015年) どのように子どもの声を集めたの? “For the Rights of All Children”は、11歳から18歳までの108人の子どもたちが直接参加して報告書を作成しました。また、計3,285人の子どもたちがアンケート調査に回答しています。 参加した108人の子ども代表は、モンゴル全土の4つの地域と首都ウランバートルから集まり、 子どもの権利の保障がどのように実践されているかを議論しました。 議論では、教育・文化・遊び・健康・社会福祉・家庭環境・ケア・市民権、また自由や児童労働といったトピックが扱われました。 報告書には、モンゴルで起きている子どもの権利の侵害と、そうした問題を解決するために子どもたち自身が考えたアイディアが盛り込まれている点が特徴的です。 学校や通学にかかわる課題がまとめられているページ。例えば通学路に潜む危険について、道路が凍って滑りやすくなっていることや、攻撃的な野良犬がいたり、街路灯が足りず暗いことなどが指摘されています。また、学校教育の中で、障害がある子どものニーズに応えられていないといった課題も。 アンケート調査は、モンゴルの各県の学校に通う7年生(中学1年生相当)と10年生(高校1年生)の生徒たち、寄宿舎に住む子どもたち[注]、そして生涯教育センターや僧院(チベット仏教の寺)で学ぶ子どもたちの3つのグループを対象に行われました。アンケートから得られた調査内容は子どもたちが分析し、報告書にまとめました。 [注] モンゴルには馬などの家畜を飼育しながら、移動式住居である「ゲル」で暮らす遊牧民がいます。遊牧民の子どもたちは、遊牧生活を送る親元を離れて、寄宿舎(寮のような場所)で生活することで学校に通うことが多々あります。 子どもの権利委員会にどんな意見・メッセージを届けたの? 報告書では、子どもたちを取り巻くさまざまな課題が5つのテーマに分けて取り上げられています。それぞれのテーマに関して、例えば以下のような意見が挙げられました。 市民権と自由:子どもが権利を持つ一人の市民として扱われておらず、子どもの声が十分に聞かれていないということ 家族環境とケア:家庭内で親のアルコール依存による暴力や心理的な負荷が深刻な課題となっていること 健康と福祉:大気汚染や屋外に設置された簡易トイレによる土壌汚染が子どもの健康リスクにつながっていること 教育、レジャー、文化:教育現場で障害に起因する差別が起きていること、家庭の経済的な事情でアートコンテストなど芸術活動への参加が制限されてしまうこと 児童労働:競馬の騎手や、ゴミ捨て場での廃品回収といった危険な児童労働が存在すること 以上のような課題に対し、子どもたちは解決のためのアイディアを数多く提示しています。 一例として、「②家庭環境とケア」にかかわる課題には、 ・子どもと家族のためのカウンセリングサービスを法律に基づく仕組みで支援すること・保護者に対して、暴力によらない子育てや家族計画に関する知識を提供すること などといった具体的な解決案が出されました。 「②家庭環境とケア」にかかわる課題に対して、子どもたちが考えた解決策。保護者に対する就業サポートなどの提案も含まれている。 また、3,000人以上を対象に実施したアンケート調査も、セーブ・ザ・チルドレンのスタッフの協力を経て、子どもたち自身によって分析されています。 そこでは、家庭環境や学校教育に関する課題が多く挙げられています。また、寄宿舎で暮らす子どもたちが、食事の量やスタッフの態度に問題があることを訴えています。 意見を届けたあとは? 2017年7月に、子どもの権利委員会はモンゴル政府に対して子どもの権利をさらに促進するための勧告[注]を行いました。 この勧告を出すにあたり、子どもの権利委員会はモンゴルにおける子どもの権利の状況を詳細に検討しました[1]。 この際、子どもの権利委員会はモンゴルの子どもたちの報告書で挙げられていた意見と共通するような懸念を数多く挙げました。 例えば、アルコールに起因する家庭内暴力が発生していることや、寄宿舎に住む子どもたちへの虐待や差別が起きていること、危険な児童労働がなくなっていないことなどが大きな問題として提示されました。 子どもの権利委員会は、「モンゴルでは子どもの権利を守ることに繋がる法律は整備されつつあるが、実際にその法律が実施されるかが最大の課題である」と結論づけています。 [注] この勧告をまとめた文書を「総括所見(そうかつしょけん)」と呼びます。 子どもたちの意見を届けるために モンゴルでは、子どもたちが中心となって子どもの権利に関するさまざまな課題を取り上げ、さらに子どもの目線で解決策を提案していることがわかりました。 次の記事では、子どもの意見を国連に届けるためのノルウェーでの取り組みについてご紹介します。ぜひお楽しみに! アドボカシー部社会啓発チーム インターン [出典] 本記事は、以下の報告書をもとに執筆されています。Save the Children, Child for Child, World Vision – “For the Rights of All Children” Children’s Report to the UN Committee on the Rights of the Child Mongolia [1] United Nations Humanr Rights Office of the High Commissioner – Committee on the Rights of the Child considers the report of Mongolia (26 May 2017)