2025.08.29 【日本の子どもの貧困】Vol.4 国や自治体による子どもの貧困対策(奨学金など) 教育子どもの貧困 ここまで、日本の子どもの貧困について一緒に考えてきました。 1回目では「子どもの貧困の現状」、2回目では「なぜ子どもの貧困を放置してはいけないのか」、3回目では「子どもの貧困の原因」を見てきましたね。 4回目の今回は、経済的に厳しい状況にある子どもたちの生活や学びの環境を良くするために、国や自治体が行っているさまざまな支援策(サポート)を見ていきましょう。 高校卒業後の進学に関わる授業料の支援 ここでは給付奨学金・授業等減免制度などについて紹介します。 経済的に困難な家庭の子どもたちが安心して学べるように、政府による授業料へのサポートが進んでいます。 専門学校・大学などの授業料への支援 文部科学省では、2020年4月から「高等教育の修学支援新制度」を実施しています。これは、しっかりとした進路への意識や進学意欲があれば、家庭の経済状況に関わらず、大学、短期大学、高等専門学校、専門学校に進学できるチャンスを確保できる制度です。また、2024年から、3人以上きょうだいがいる多子世帯や、私立の理工農系の学部などに通う学生なども支援を受けられる対象となりました[1]。 対象校リストで、進学先、在学の学校が対象校か確認しよう!(大学・短大・高専・専門学校) この制度のおかげで、対象となる世帯の子どもたちの大学などへの進学率が約29%も上がったと推計されており[2]、お金を給付する形でのサポートがいかに大切かを示しています。 高校卒業後の進路を考えるとき、お金は大切なことです。 話しにくいと感じることもあるかもしれませんが、お金の心配をせずに進学できるよう、保護者・養育者の方と一緒に調べてみましょう! 授業料以外の学びを支えるための支援 学校で勉強するために必要なお金について、授業料以外にもいろいろとかかってきます。 以下は、授業料以外で学びを支えるための国や自治体のサポートです。 小・中学生向け: 就学援助制度について(就学援助ポータルサイト):文部科学省 これは、小学生・中学生を対象に、授業料以外にかかる学用品費、給食費、修学旅行費などをサポートする制度です。支援を利用できるかどうかの基準は、各市町村によって異なります。 以下のリンクから、あなたが住んでいる都道府県の市町村の問い合わせ先を調べてみてください。就学援助のお問合せ先:文部科学省 (47都道府県の「就学援助制度」の問い合わせ先 (令和6年7月時点)に飛びます。) 学費以外の就学に関わる費用を支援する就学援助制度 高校生向け: 高校生等奨学給付金(こうこうせいとう しょうがくきゅうふきん) これは、高校生を対象に、教科書代や学用品など、授業料以外の教育費をサポートするための制度です。授業料以外の教育費とは、教科書費、教材費、学用品費、通学用品費、教科外活動費、生徒会費、PTA会費、入学学用品費、修学旅行費、通信費などがあります。 こちらも、各都道府県によって条件が異なるので、具体的な内容を知りたい場合は、下のリンクからあなたが住んでいる都道府県の問い合わせ窓口を確認して、問い合わせてみてください。 高校生等奨学給付金のお問合せ先一覧:文部科学省(47都道府県の「就学援助制度」の問い合わせ先 (令和7年7月時点)に飛びます。) 高校生への授業料以外の費用を支援する給付金 これらの制度は、学校生活にかかる費用のすべてをカバーするものではありませんが、子どもたちの学びを支える大切な仕組みです。 でも、まだ足りない?これからの課題 文科省の「高等教育の修学支援新制度」のページに飛びます。 こうしたサポートは進んでいますが、残念ながら、問題の大きさに対して、対策はまだ十分とは言えません。 日本では2013年に「子どもの貧困対策の推進に関する法律」ができ、2024年には法律の名前が「こどもの貧困の解消に向けた対策の推進に関する法律」と変わりました。子どもの貧困を「解消」するために対策を進めていく、と定められています。 具体的な対策は、「こども大綱」にまとめられています。 主に「教育の支援」「生活の安定に役立つ支援」「保護者の仕事の支援」「経済的な支援」という4つの柱で子どもたちを支えようとしています[3]。 しかし、その中身をよく見てみると、すぐに家庭の収入が増えるような支援策はまだ少なく、相談に乗ったり、地域の情報を提供したりといったものが中心になっています。また、すべての子どもたちを支えるはずの児童手当や生活保護といった制度も、もらえる金額が十分でなかったり、立場によっては利用できない人たちがいるのも現実です。 そのため、家庭の収入全体がアップするように、社会の仕組みをより良いものに改善していく必要もありますし、特に大変な状況にある子どもたちにはもっと手厚いサポートを提供していく必要があります。 このシリーズの全記事は以下のリンクから読むことができます。 【日本の子どもの貧困】Vol.1 子どもの貧困の現状【日本の子どもの貧困】Vol.2 なぜ子どもの貧困を放置してはいけないのか【日本の子どもの貧困】Vol.3 子どもの貧困の原因【日本の子どもの貧困】Vol.4 国や自治体による子どもの貧困対策(今回の記事)【日本の子どもの貧困】Vol.5 子どもの貧困と子どもの権利に関する意識調査 この記事を書いた人:アドボカシー部インターン ハギヤユカリ [1] 文部科学省「高等教育の修学支援新制度」[2] 文部科学省「高等教育の修学支援新制度における学業要件の在り方について(報告)」[3] 文部科学省「令和6年度 高等教育の修学支援新制度における学業要件の在り方について」