2025.07.09 【日本の子どもの貧困】Vol.2 なぜ子どもの貧困を放置してはいけないのか 子どもの貧困 子どもの貧困における問題点 経済的に困難な状況にある家庭では、子どもたちの生活にもさまざまな影響が出てきます。 たとえば、 毎日十分に食べることができない 病院に行きたくても、お金がなくて受診をあきらめてしまう 勉強するための机や静かな環境がなく、宿題に集中できない 美術館や博物館、スポーツ観戦などの体験をする機会が少ない 子どもの権利条約第5条:子どもの権利を行使できるように、親などから心身の発達にあった適切な支援を受ける権利があります。 上に書いたようなことは、多くの人にとって「あたりまえ」にできていることかもしれません。 実際に、日本も1994年に「国連子どもの権利条約」を批准し、子どもたちの大切な「権利」を守ることを約束しています。 しかし、政府やセーブ・ザ・チルドレンのような市民団体がこれまで行(おこな)ってきた調査の結果を見ると、今の社会ではまだまだ子どもの権利が十分に守られていない現実があるということが明らかになっています。 こうした状況は、子どもたちの心身の成長や学びの機会を奪い、将来の選択肢を狭めてしまうことにつながります。 子どもの貧困と進学率の関係 子どもの貧困は、子どもたちの今の暮らしとともに、未来の夢や得られる機会にも大きな影響を与えます。 たとえば、高校を卒業した後、大学や専門学校に進む割合を見てみましょう。 2022年度(令和4年度)の統計では、高校を卒業した生徒全体のうち、大学や短期大学、専門学校などに進学した割合は約83.8%(大学・短大への進学率は56.6%)でした[1]。 一方で、生活保護[注]を利用している家庭の子どもたちに限定して見てみると、大学や専門学校などへの進学率は59.8%程度(大学・短大への進学率は約42.0%)と、大きな差があります[2]。 [注] 生活保護は、憲法で定められた「健康で文化的な最低限度の生活」を守るために、生活に困っている人が安心して暮らせるよう国が支える制度です。一定の条件はありますが、誰でも自由に申請できる、人権を守るための仕組みです。くわしくは、厚生労働省のホームページをご覧ください。 子どもがしっかり教育を受けたり、将来のための資格を取ったりすることは、おとなになってから一生で得られる収入(これを「生涯所得(しょうがいしょとく)」と言います)や、国に納める税金、そしてみんなの医療や年金を支える社会保険など社会に貢献する力にも大きく関わってきます。 そのため、「子どもの貧困」をそのままにしておくと、子どもたち一人ひとりの可能性が閉ざされてしまうだけでなく、社会全体にとっても大きな損失になるのです。 この社会全体にとっても大きなマイナスは、「社会的損失(しゃかいてきそんしつ)」呼ばれています。 ある報告によると、子どもの貧困による社会的損失の金額は、なんと42.9兆円もの大きな額になると試算されています[3]。 貧困問題を放置することは、誰も幸せにならない選択です。 子どもの権利条約で定められていること 子どもの権利条約では、「生きる・育つ権利(第6条)」、「社会保障を受ける権利(第26条)」、「生活水準の確保(第27条)」、「教育を受ける権利(第28条)」など、子どもたちが安心して成長し、自分の可能性を伸ばしていくために必要なことが定められています。 子どもの権利条約第26条:子どもの生活を支えていくために、社会保障などのサポートを利用する権利があります。 もしも家庭の事情などによって、今、体やこころを成長させていくために必要な十分な水準の生活を送ることができていないとしたら、それは決して子ども自身の責任やその家庭だけの問題ではありません。 日本は、子どもの権利条約を批准し、条約に定められた子どもの権利を守ると約束しました。政府は、すべての子どもたちにとってその国で「あたりまえ」とされている生活を送ることができるよう、より良い政策や仕組みを考えたり、サポートを提供する義務があります。 次の記事では、子どもの貧困の原因について見ていきます。 【日本の子どもの貧困】Vol.1 子どもの貧困の現状【日本の子どもの貧困】Vol.2 なぜ子どもの貧困を放置してはいけないのか(今回の記事)【日本の子どもの貧困】Vol.3 子どもの貧困の原因【日本の子どもの貧困】Vol.4 国や自治体による子どもの貧困対策【日本の子どもの貧困】Vol.5 子どもの貧困と子どもの権利に関する意識調査 この記事を書いた人:アドボカシー部インターン ハギヤユカリ [1] 文部科学省「令和4年度学校基本調査」 [2] こども家庭庁「我が国におけるこどもをめぐる状況」(令和6年) [3] 日本財団子どもの貧困対策チーム「徹底調査 子供の貧困が日本を滅ぼす 社会的損失40兆円の衝撃」(文春新書) ※推計の概要はこちらから:子どもの貧困の放置で生まれる社会的損失は40兆円「投資の視点」で対策を