2025.04.10 体罰としつけは違う!たたかれていい子どもなんていない 子どもの保護 「悪いことをしたらたたかれて当然」 「しつけのために少しくらい手をあげるのは仕方ない」 ――こんな考えを聞いたことがあるかもしれません。でも、本当にそうでしょうか? 結論から言うと、どんな理由があっても、子どもがたたかれていい理由はありません。 体罰としつけはまったく違うものです。今回は、その違いについて考えてみましょう。 体罰としつけは何が違うの? 体罰としつけ、その違いは何でしょうか。 しつけと体罰の違い 国のガイドライン(政府が出している基準)によると、体罰としつけは、それぞれ次のように説明されています[1]。 ・しつけとは、子ども自身を伸ばし、社会において自律できるよう、子どもをサポートする行為です。 ・体罰とは、軽くても、苦痛や意図的な不快感をもたらす行為(罰)です。 しつけとは、子どもが社会で生きていくために必要なルールやマナーを学ぶことです。 例えば、「あいさつをする」、「人の話を聞く」、「順番を守る」といったことを教えるのがしつけです。 一方で、体罰とは、子どもを罰するために暴力をふるうことを指します。例えば、「言うことを聞かないからといってたたく」、「大声でどなる」、「正座を長時間させる」などが体罰にあたります。 体罰は人を傷つけたり、嫌な思いをさせたりするためにやることで、モノや身体などの力を使って罰を与えることです。どんなに軽かったとしても、力を使って与えられる罰はすべて体罰と言います[2]。 例えば、飲み物をこぼした子どもが、罰としてたたかれたとしたら、それは体罰です。多くの場合、子どもは手のひらでたたかれるか、おしりをたたかれます。それ以外にも、例えば、子どもをける、ゆさぶる、辛い姿勢をとらせるなども、体罰にあたります。 授業中、生徒が問題の答えが分からなかったときに、先生がその子を長い間立たせることも体罰です[3]。 また、身体を傷つけるのと同じくらい、ひどい罰もあります。 例えば、子どもをわざとこわがらせたり、恥ずかしい思いをさせたりする罰などです。 ・ 「そんなバカな子に育てた覚えはない」など、子どもの人格を否定するようなことを言う ・ 「お兄ちゃんは、もっと上手にできたのに、お前は下手くそだね」ときょうだいを引き合いにしてけなす このような言葉は、体罰と同じように子どもを傷つけることです。 これらはすべてまちがっていて、禁止されるべきものです[4]。 国連子どもの権利委員会は、体罰などがどのような行為なのか、なぜ禁止すべきなのかを明確に示しています[3]。 しつけは子どもを成長させるものですが、体罰は子どもに恐怖や苦痛を与えるだけで、本当の意味で子どもの成長にはつながりません。 体罰が子どもに与える影響 「少しくらいなら大丈夫」、「自分もたたかれて育ったけど問題なかった」というおとなもいるかもしれません。 しかし、体罰には次のような悪い影響があります[5]。 恐怖で行動するようになる たたかれることで「怒られたくないから言うことを聞く」という考え方になり、自分で考えて行動する力が育ちにくくなります。 暴力を正当化してしまう たたかれて育った子どもは、「自分も人をたたいていい」と攻撃的になってしまうことがあります。 これは、学校でのいじめや家庭内暴力につながってしまう可能性もあります。 自己肯定感が下がる たたかれることで、「自分はダメな人間なんだ」と思い込んでしまう子どももいます。これが続くと、自分に自信が持てなくなってしまいます。 子どもの権利を知っていますか? 子どもの権利条約第18条:子どもの養育はまず親に責任 子どもの権利条約第19条:あらゆる暴力からの保護 皆さんは、「子どもの権利条約」という国際的な約束を知っていますか? この条約には、「子どもは暴力から守られるべき存在である」と明確に書かれています。日本もこの条約を守る国の一つです。つまり、たたかれることはしつけではなく、子どもの権利を侵害する行為なのです。 また、日本では2020年に「親による体罰の禁止」が法律で定められました[2]。 つまり、親であっても子どもをたたいてはいけないのです。 親には、子どものために見守ることや、保護すること、また教育をする権利と義務があります。 このため、親は、子どもを養育し、教育するためのしつけをしますが、「理想の子どもに育てよう」、「将来困らないようにしっかりとしつけなくては」、「他人に迷惑をかけない子どもに育てなくては」などといった思いから、時には、しつけとして子どもに罰を与えようとすることもあるかもしれません。 しかし、たとえしつけのためだと親が思っても、身体に、何らかの苦痛を引き起こし、または不快感を意図的にもたらす行為(罰)である場合は、どんなに軽いものであっても体罰とされ、法律で禁止されています。 世界ではどうなっているの? 子どもに対する体罰を全面的に法律で禁止している国の数の推移 子どもへの体罰禁止の取り組みは、世界中で広がっています。 現在、世界で子どもに対する体罰を法律で禁止している国は65ヶ国となっています(2022年時点)。日本は世界で59番目の体罰を全面的に禁止した国です[6]。 もしもあなた自身が、体罰に関する説明で思い当たることがあるとしたら もし「自分はたたかれているけど、これって普通なのかな?」、「これって体罰なのかな?」と思ったら、一人で悩まないでください。日本には、子どもを守るための相談窓口があります。 「189(いち・はや・く)」に電話をすると、児童相談所につながります。(通話料無料・年中無休) 電話やSNS、面談を通して、児童相談所の人(相談員)が相談にのってくれます。 体罰にあった時に、助けてもらえる仕組みがいくつかあります。皆さんの希望や状況から判断して、例えば親と離れて暮らすことができる児童養護施設などで生活できるようにしてくれることもあります。 「相談したのがバレたら親に怒られるんじゃないか」、または「学校や部活で先生にもっと厳しい罰を与えられたり、みんなの前ではずかしめられるんじゃないか」と心配な場合は、名前や住所を言わないで、まず相談してみることもできます。 こちらの「相談窓口一覧」に、政府や各地域が開いている相談窓口をのせています。 「自分さえ我慢すればいい」と思わずに、もしまわりに信頼できるおとながいたらその人に、そして知らない人の方が話せる場合はこのような相談窓口に話してみてください。 もしも友人から体罰の相談を受けたら?体罰を見かけたら? また、もしあなたの周りに「体罰や虐待を受けているかもしれない」と思う子がいたら、あなたも「ゲートキーパー」としてその子を助けることができます。 大事なのは、あなた自身で状況をすべて解決しようとしたり、すべての責任を背負ったりしないようにすることです。まず、友だちに他の信頼できるおとなに相談しても良いかを確認してから、信頼できるおとなに相談してみましょう。 もし友だちから「だれにも言わないで」と言われたら、「じゃあ一緒に相談機関に行ってみない?」などと声をかけてみてください。 もし友だちから「どうしても言わないで」と言われたら、勇気を出して児童相談所虐待対応ダイヤル「189(いち・はや・く)」(通話料無料・年中無休)に電話して、あなたが聞いた状況を相談員に伝えてください。 189に電話をすると、その地域の児童相談所に電話がつながり、通告したり相談したりできる仕組みになっています。ここでは、誰が連絡したかはわからないように対応することが約束されています[7]。 また、友だちにも189のことを教えてあげてください。 相談を受けた方へ ― ゲートキーパーになろう!- ゲートキーパーとは、悩んでいる人に気づき、声をかけてあげられる人のことです。 特別な研修や資格は必要ありません。誰でもゲートキーパーになることができます。以下のページでは、周りで悩んでいる人がいたり、すでにゲートキーパーとして誰かを支えているあなたへの支援などについて書かれています。 (青少年向け) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/gatekeeper2.html (ゲートキーパーへの支援)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/gatekeeper3.html たたかれていい子どもなんて、一人もいません。 みんなが安心して過ごせる環境をつくるために、勇気を出して行動したり、一人で抱えきれない時にはぜひ周りにある支援を頼ったりしてみてください! この記事を書いた人:アドボカシー部社会啓発チーム 唐語思 [1] 厚生労働省 「体罰等によらない子育てのために~みんなで育児を支える社会に~」 2020.2.20 [2] セーブ・ザ・チルドレン どうなる?子どもへの体罰禁止とこれからの社会 「1.体罰としつけは何が違うの?」 [3] セーブ・ザ・チルドレン 「たたくのはやめて!子どもに対するあらゆる体罰を禁止するために よくある質問集<子どもと若者のみなさんへ>」 [4] セーブ・ザ・チルドレン 「2.体罰禁止のポイント」 [5] 厚生労働省 「子どもを健やかに育むために~愛の鞭ゼロ作戦~」 [6] セーブ・ザ・チルドレン どうなる?子どもへの体罰禁止とこれからの社会 「5. 世界では、どうなっているのでしょう?」 [7] こども家庭庁 「児童相談所虐待対応ダイヤル「189」について」