子どもたちの参加例 2025.12.11 子どもの権利条例と子ども参加★5つの自治体の取り組み事例★ 教育 自治体の取り組み子ども・ユース声 あなたの声がまちを変える! 全国の自治体の中には、子どもの声を聴き、それを地域で活かすための子ども参加を積極的に行っているところがあります。2023年4月にこども家庭庁が発足して以降、こうした取り組みはさらに広がっています。 ここでは、5つの自治体における子ども参加の事例について紹介します! その前に・・・ 各自治体の取り組みを読む前に、まずよく出てくるキーワードの意味を確認しておきましょう。 <条例> 条例とは、各都道府県や市区町村がつくる、その地域のルールです。国がつくる法律とは違い、その地域に住む人たちのために、地域の実情に合わせてつくられます。例えば、ゴミ出しのルールや、公園の使い方など、その地域だけの決まり事のことを言います。子どもの権利条例は、子どもたちが安心して自分らしく生きるために、いじめや虐待などから守られたり、社会により意見が聴かれやすいよう、子どもの権利を推進するためにつくられたルールです。子どもの声を大切にしようとする自治体の決意の表れでもあります。 <前文> 前文とは、条例の本文の前に書かれている文章のことです。なぜこの条例をつくったのか、どんな思いや目的があるのかを説明する部分です。「はじめに」のようなもので、前文を読むと、条例に込められた地域の願いや理念をより良く理解することができます。 子どもの権利条例に子どもたちの声を 富士市(静岡県) 富士市では、子どもの権利条例の前文に子どもたちの声や思いを取り入れるための取り組みを多く行いました。 例えば、市内6つの高校で「前文作成検討チーム」を結成、ワークショップで盛り込みたいフレーズを検討し、市長に提案を行いました。その結果、 「富士山のように」「失敗や成功を繰り返し」「子どもと大人は、幸せを分かち合うパートナー」「自分と同じように他の人を思いやる」など、子どもたちが考えたフレーズが実際に条例前文に盛り込まれました。今後もさまざまな取り組みに対して子どもが意見表明や参加できる機会を設け、子どもの多様な声を取り入れることにより、子ども視点でのまちづくりを推進していきます。 富士市子どもの権利条例「高校生ワークショップ合同発表会」 市長に対して提案を行う高校生たち 富田林市(大阪府) 富田林市では「こどもの権利条例」をつくるために、市長を中心とした「こどもまんなか推進本部」や、「こども政策推進プロジェクトチーム」が立ち上がりました。教育や人権など、子どもに関わるさまざまな部署の職員がチームを組み、子どもや若者を中心に置いた「こどもまんなか」社会の実現を目指して話し合いを進めています。 富田林市でも、条例に子どもの声を取り入れるために、「こどもの権利条例いっしょに作ってみない会?」というワークショップを開催しています。 富田林市に住んでいる、または市内の学校に通う小学4年生から高校3年生の12人が集まり、夏休みに条例の前文(こどもの思いや大人へのメッセージ)を考えました。今年12月には発表会で前文をお披露目する予定です! 富田林市の子ども参加のワークショップの様子 富田林市内に住んでいるメンバーがつくった「こどもの権利条例」の前文 子どものための政策を検証(チェック)する仕組みづくり 泉南市(大阪府) 泉南市では、「子どもの権利条例」が本当に守られているかを確認するための仕組みが整えられています。 条例の第19条では、条例がしっかりと実施されているかを市が定期的にチェックすることが決められています。そのために「子どもの権利条例委員会」と「市民モニター制度」が設けられました。 「市民モニター制度」は、子どもや市民から広く意見や提案を集めるための仕組みです。 市民モニターには大人だけではなく「子どもモニター」もいます。年に2回ほど開かれる市民モニター会議で、条例がどのように実施されているか報告を聞いた上で、自分の考えを出し合います。 こうした意見は「条例委員会」にも報告され、条例をよりよいものに育てるために活かされています。 ちなみに、泉南市では子ども会議も月に1回、継続的に定期開催しています! せんなんこども会議のメンバーたち 子どもと一緒に子どもの権利を守る 名古屋市(愛知県) 名古屋市には、「なごもっか」という子どもの権利を守るための相談室があります。そこでは、子どもの権利擁護委員[注]が、公平で中立的な立場から子どもの権利を守るための活動に取り組んでいます。 「なごもっか」では相談を受ける時や広報活動をする時も、子どもの声を大切にし、子どもにとって一番良いことを子どもと一緒に考えるようにしています。 たとえば、相談してくれた子どもと一緒に学校へ働きかけ、老朽化した校舎の改修をして安全に過ごせる環境をつくってもらったり、入試で読み書きが苦手な子どもでも受験しやすい方法を考えてもらうなど、よりよい仕組みに変えることも行っています。 さらに、「なごもっか」の運営や広報活動に参加する子どもだけのチーム「てつなぎなごもんず」もつくりました。このチームのメンバーと一緒に、「なごもっか」や子どもの権利をもっと多くの人に知ってもらうための動画などをつくったり、2025年8月には子ども向けの活動報告会を開きました。 [注] 子どもの権利擁護委員(こどものけんりようごいいん)とは、困っている子どもたちの相談を聞き、問題を解決に導くために動く第三者機関です(第三者機関とは、自治体や関係者から独立した機関のことです)。子どもや保護者などからの相談や、子どもの権利擁護委員自らの考えにもとづき、学校など関係する機関に対して調査したり、制度を改善するよう求めることができます。子どもの権利条約総合研究所によれば、子どもの権利擁護委員がいる自治体数は2025年4月現在、全国で57しかありません。これは全国約1,700の自治体のうち、まだごく一部です。名古屋市の他には、東京都世田谷区、愛知県豊田市なども子どもの権利擁護委員を置いています。 「てつなぎなごもんず」の部屋をのぞいてみよう なごもっかの紹介 国立市(東京都) 国立市では、「子どもの人権オンブズマン[注]」や子ども関連の部署が、子どもの権利を広める活動を行っています。 その一つに、市内の公立中学校で行われている「スクールバディ活動」があります。この制度は、生徒自身が「スクールバディ」となり、他の生徒からいじめに関する相談を受けるなどの活動を行うものです。いじめのない学校を目指して、子どもたちが自分たちで学び、考え、啓発活動を進めています。 「スクールバディ」になるかどうかの希望を聞く前の導入として、子どもの人権オンブズマンが中学1年生を対象に、子どもの権利やいじめについて考える講演を実施しています。 [注] オンブズマンとは、行政が正しく仕事をしているかを監視し、市民の苦情を受けて調査や改善を求める独立した第三者機関のことです。オンブズマン(Ombudsman)はスウェーデン語から来ていて、市民の権利を守る「見張り役」とも言われています。子どもの人権オンブズマンは、子ども専門のオンブズマンで、いじめ、虐待、学校や施設等での人権侵害などの相談に、子どもの側に立って関係者との調整を行い、必要に応じて調査や勧告をすることで問題解決を目指します。子どもの権利擁護委員もオンブズマンも「子どもの相談を受けて、権利を守る」という点でほぼ同じ役割で、自治体によって呼び方が違うだけです。 国立市で子どもの権利に関する授業 子どもオンブズマンのワークショップ より多くの子どもの声が聞かれる環境づくりを目指して 以上で紹介したように、多くの自治体が子どもの権利を守るために取り組みを進め、子どもの声を反映できるように工夫しています。 セーブ・ザ・チルドレンは、すべての子どもが安心して自分らしく暮らせる社会を目指しています。そのためには大人も子どもも、子どもの権利について学び考えることが大切です。 この記事を読んだ皆さんも、自分のまちで子どもの権利を実現するためのルールづくりに参加する機会があるか、ぜひ調べてみてください! アドボカシー部インターン この記事は、セーブ・ザ・チルドレンの「自治体における子どもの権利条例と子どもの権利救済制度に関する調査報告書」で取り上げられた自治体の取り組みの一部を紹介したものです。各自治体の活動については、以下のウェブサイトを見てみてください。 ・富田林市富田林市こどもまんなかアクションこどもの権利条例いっしょに作ってみない会? ・富士市子どもの権利条例策定までの経過 ・泉南市子どもの権利条例モニター制度 ・名古屋市名古屋市子どもの権利相談室なごもっか(子ども向けウェブサイト)名古屋市子どもの権利相談室なごもっか ・国立市子どもの人権オンブズマン