2026.07.10 ワールドカップの熱狂の舞台裏で-子どもの人身取引を防ぐために- この記事と関連が深い子どもの権利第31条:休み、遊ぶ権利第35条:ゆうかい・売買からの保護 サッカーワールドカップは、4年に1度開催されるとても大きなスポーツイベントです。ワールドカップと聞くと、「楽しい」、「感動」といったポジティブなイメージを持っている人が多いかもしれません。一方で、このような多くの人たちが一堂に集う国際大会では、子どもたちを守るために気をつけなければいけないこともあります。 その一つは、大会期間中に開催地の子どもの人身取引(人身売買)[注]のリスクが高まるということです。 なぜワールドカップ期間中に人身取引のリスクが高まってしまうのでしょうか。 [注]子どもの人身取引または人身売買とは、臓器移植、強制労働、性的搾取(相手の弱みや立場の違いを利用して、性的目的のために利用や支配したり、利益を得ること)などを目的として、子どもたちをモノとして売買することです[1]。 子どもの権利条約第35条:ゆうかいされず、売り買いされない権利があります。 ワールドカップのような大きなイベントでは、多くの観光客が訪れ、ホテルや飲食店、公共機関などが普段より混雑します。 そのような状況下では、人の出入りが多くなるため不審な行動が目立ちにくくなります。 また、大会の開催に関連して、一時的に仕事を探す人も増えることから、「高収入の仕事がある」などとウソの話を持ちかけられ、子どもや若者が人身取引の危険に晒されやすくなってしまう背景があります。 ワールドカップ開催地メキシコでの取り組み 2026年のワールドカップは、史上初の、アメリカ・カナダ・メキシコの3ヶ国(こく)共同開催です[2]。 その主催国の一つであるメキシコには、大会期間中の6月(がつ)から7月(がつ)にかけて、多くの観光客や報道関係者など、約1,000万人が訪れると見込まれています[3]。 これに伴い、上記のような子どもたちの安全を脅かす事象が増えることが考えられます。 そこで、子どもや若者を守るために、約2,400人のメキシコの公務員が、セーブ・ザ・チルドレンによる人身取引を防ぐための研修を受けました。 この研修には、メキシコ国立移民研究所(Instituto Nacional de Migración:INM)、観光省、児童保護機関など、子どもたちと接する機会の多い職員が参加しました。 研修では、人身取引が起きそうな予兆を見抜く方法や、被害を未然に防ぐための対応など、ワールドカップ期間中になるべく早く子どもを保護する体制を機能させるために知識や技術の共有が行われました。 例えば、子どもが以下のようなサインを見せている場合、人身取引の被害にあっている可能性があります。 一緒にいる大人の前で、恐怖・不安・緊張を示していたり、不安そうな様子を見せている 話すことを避ける、または何を言うべきか指示されているように見える 自分がどこにいるのか、誰と一緒に移動しているのか分かっていないように見える、混乱している 一緒にいる大人との関係や自分の状況について、矛盾した説明をする 自分の行き先や家族についてうまく説明できない など また、子どもがその年齢にふさわしくない場所にいる(例えばホテル、バー、夜の繁華街など)、大人と子どもの不自然な組み合わせによるホテル予約があることなども、兆候となりうるサインです[4]。 研修を受けた職員がこうした小さな変化に気づき、他の機関と連携してすぐに対応することで、子どもたちを危険から守ることが期待されます。 研修の一環として、セーブ・ザ・チルドレンはスペイン語版ガイドブックを作成しました。 このガイドブックでは、子どもと直接関わる現場の職員が人身取引のリスクをいち早く発見し、適切に対応するための指針が示されています。 さらに、セーブ・ザ・チルドレンはメキシコ国内のデジタルプラットフォームを通じて啓発キャンペーンを開始しました。 国際的に大きなイベントの開催に伴う人身取引の危険性や、ワールドカップ期間中に子どもや若者の安全を脅かす可能性のある状況に直面した際の対応方法について情報提供を行っています。 ワールドカップ期間中の子どもの人身取引のリスクについては、メキシコ政府に加え、共同開催国であるアメリカとカナダの関連機関も注意喚起をしており、3ヶ国(こく)間(かん)での連携を進めています[5]。 私たちにできること 子どもの人身取引をなくすために、私たちにできることは何でしょうか。 まずは、ワールドカップという大きなイベントの裏側で、子どもたちが危険にさらされる可能性があることを知ることが大切です。 また、人身取引について正しい知識を身につけ、子どもの権利を守るために活動している団体の取り組みに関心を持つことも、子どもたちを守ることにつながります。 もし友だちや周りの子どもの様子に違和感を感じたり、異変に気付いたりしたら、まずは信頼できる大人に相談してみることで適切な支援につなげることができるかもしれません。 子どもの権利条約第31条:子どもには、休む権利、自由な時間を持つ権利、遊ぶ権利があり、文化的・芸術的な活動に十分に参加する権利があります。 ワールドカップは、世界中の人々に夢や感動を届ける大会です。 そして、その舞台裏では、子どもたちを守るために多くの人が力を合わせて活動しています。 選手たちを応援するのみならず、開催地の子どもたちの安全にも目を向けることで、スポーツをより安心して楽しめる社会にしていくことができます。 一人ひとりがこの問題に関心を持つことが、子どもたちの未来を守る大切な一歩になります。 皆さんも、この記事を読んで考えたことを、ぜひ家族や友だちに伝えてみてください! 考えてみよう ワールドカップの開催地のように、たくさんの人が集まったり行きかうような場所では、人身取引(人身売買)に加え、どのような危険が子どもに起こると考えられますか?またそれらに対し、あらかじめどんな対策をしておくことで、子どもたちを危険から守りやすくなるでしょうか? アドボカシー部 インターン [1] UNICEF、「子どもの人身売買ってなあに?」、2004.09[2] FIFA、「FIFAワールドカップ2026:開催国、開催都市、日程、その他」、2026.06.01[3] Gobierno de México, “Derecho de réplica, miércoles 17 de junio 2026. Palacio Nacional”, 2026.06.17[4] Save the Children Mexico (2026), “HERRAMIENTAS PARA LA PROTECCIÓN DE NIÑAS, NIÑOS Y ADOLESCENTES EN EL MARCO DEL MUNDIAL 2026”.