自分と社会・世界 ISSUES

2024.12.27

【能登半島地震】子どもたちが感じている気持ちや疑問に一問一答

緊急・人道支援

能登半島地震から1年。 

 

セーブ・ザ・チルドレンは、主に被災地域の子どもたちを対象に2024年7月に「2024年能登半島地震子どもアンケート~震災から半年いま伝えたい子どもたちの声~」を行いました。 

アンケートには、子どもたちの地震や復興への思いがたくさん寄せられました。協力してくれた皆さん、ありがとうございました。 

2,000件を超える回答の中には、地震の怖さ・不安な気持ちが書かれているものも多くありました。 

災害などの緊急事態に直面すると、不安や恐怖、悲しみを抱くのは自然なことです。でも、その気持ちにどう向き合い、受け止めていけばよいのか、あまり知らない人もいるかもしれません。 

そこで、心理の専門家の力を借りて、子どもたちの気持ちや疑問に一問一答の形で答えてみたいと思います。 

(質問は、アンケートから、複数の子どもたちが書いていた内容の自由記述を選び、組み合わせたりして8つ作成しました。) 

協力:(公社)日本公認心理師協会、(一社)日本臨床心理士会 

 

子どもたちが感じている気持ちや疑問に一問一答 

 Q1. どれだけ時間がたっても、何度も地震のことを思い出してしまいます。

(七尾市、高3、女)

<回答①> 

地震のことは、突然の衝撃的な出来事だったので、自分で思い出そうとしていなくても突然、思い出されてしまうこともあるかもしれませんね。思い出した時、どのような気持ちになるでしょうか。思い出した時に、強い不安、緊張、怖さがありますか。それとも、「今は、大丈夫」とホッとした気持ちになるでしょうか。思い出すこと自体(記憶)は、「危険」ではありません。自分が、「今、安全な場所にいること」を実感していけることで、出来事に対する捉え方も書き換え(アップデート)されていきます。それに伴って、少しずつ思い出した時の不安や恐怖が減っていくでしょう。 

  

Q2. また地震が来ないかと不安になります。一人でいるときに地震が来たらと考えるとこわいです。一人でいるのがこわくなりました。

(珠洲市、中3、女)

<回答②> 

また地震が来たら…その時、一人だったらどうしよう…そんなふうに考えると、不安で怖くて心細くなってしまいますよね。その気持ちを友だちに話してみたことはありますか。あなたの気持ちに共感してくれる人が多いことに気づき、まず心細さがやわらぐかもしれません。次に、安心できるだれかと一緒に、どうなることが怖いのか、それに対してできることは何かを考えてみてください。家族とはぐれてしまう恐怖であれば、そうなった時の連絡方法を前もって決めておくのです。また、深呼吸や自分だけのおまじないなど、不安感や恐怖心をやわらげる方法を身につけておくことも大切だと思います。みんなと一緒に今できる準備をしておけば、必ずうまく対処できるはずです。

 

Q3. 地震のあと、同じ学校の友だちとはなれてしまったり、まちから人がいなくなってしまうのが悲しいです。

 

(輪島市、小4・中1の自由記述からまとめた質問)

<回答③> 

いつも一緒にいた大切な友だちがそばにいない、そんなさみしさを感じているのですね。まちから出て行く人もいて、まるで置いて行かれたような気分なのでしょうか。もしかしたらそれは、地震の後に経験したつらい気持ちを、だれにも分かってもらえないと感じているからなのかもしれません。もし、今ここにその友だちがいたなら、どんなことを伝えたいですか。それをこころの中で言葉にできそうですか。そして、今その言葉を受け取ってくれそうな身近な人はだれですか。全部でなくても、少しだけでも分かってくれる人です。それは、家族やクラスの友だちや先生かもしれません。そして、はなれてしまった友だちも分かってくれる一人かもしれません。 

 

Q4. 被災者以外は地震があったことを忘れている気がする。被災者の大変さがよくつたわっていない気がして悲しくなることがある。

(輪島市、中2・高3の自由記述からまとめた質問)

 

<回答④> 

被災地の多くの人が同じような気持ちを感じていることと思います。 

あなたが言う通り、どんなにニュースなどで被災地の様子を見ても、被災地以外の人には本当の大変さが伝わらないことがあります。それに、時間が経つにつれ被災地のことを考えることが減ってきたりします。それは被災地のみんなにとって、とても悲しくなることですね。それに対して、どうしたらよいか…なかなかよい解決策を見つけることはできないかもしれません。ただ、一人ひとりが忘れない努力をすることや、あなたのように、「忘れないで」という気持ちを発信することはとても大事なことだと思います。 

日本は災害が多い国です。みんなが、他人事だと思わず、考えていけるといいですね。 

 

Q5. 学校生活が大きく変わりすこしこころぼそい。あそびがないから楽しくない。

(能登町、小6の2人の自由記述からまとめた質問)

<回答⑤> 

学校の場所が変わったり、友だちが転校したり、不安で心細くなることがたくさんありましたね。あなたのそばにいるだれかに、あなたの気持ちを伝えてみることができたら、少し気持ちがおちつくかもしれません。学校の運動場や近くの遊び場が使えなくなって、これまでのように遊べないと、つまらないですね。でも本当は前みたいに遊び場で楽しく過ごしたい気持ちがあるのですね。「遊び場がほしい!」というのは、とても大事な願いなので、校長先生や周りの大人の人にも、あきらめずにあなたの願いを伝えてみてください。同じ気持ちをもっている仲間や応援してくれる人たちみんなの気持ちが、過ごしやすいまちづくりをすすめる力になるでしょう。 

 

Q6. ほんとに安心できなくて夜眠れてません。

(穴水町、中3、女)

<回答⑥> 

今晩、ほんの一瞬だけでも、安心して眠れた瞬間が訪れたらどれだけ良いことでしょう。ここまで眠れない日が続くと相当につらいと思います。リラックスの方法や眠りやすくなる生活環境づくりを保健室の先生やスクールカウンセラーに尋ねることも役立ちますが、何よりも本当に安心できることが大事ですね。もしかすると「大丈夫」「安心しておやすみ」などの言葉を聞いても、どこか安心できないのかもしれません。それでも、支えてくれる人や仲間がいると、少しずつ安心に触れることができます。眠れないことが続くと、いろいろな不調が出てくることがあります。そんな時には信頼できる大人に眠れないことについてもお話ししてみてください。 

 

Q7. 地震があってから、少しの音でもこわくなってしまいます。

(輪島市、小4、女)

<回答⑦> 

とても怖い思いをしたから、体もこころも緊張しているのだと思います。何かいつもと違うことが起きた時に、人は自分を守るためにいつもよりも警戒心が強くなります。だから、少しの音でも怖くなってしまうのかもしれません。それはとても自然な反応で、自分を守るために体とこころががんばっています。でも、ずっと続いてしまうと、疲れてしまうし、ゆっくり休めないこともあるかもしれません。まず、怖い思いをしてもがんばってきた自分をほめてあげてください。そして、少しでもほっとできる場所や時間を大切にしたり、安心できる人がいたら、怖かった気持ちを話してみるのもいいかもしれないですね。 

 

Q8. どのようにまわりの人をはげませば良いですか。

(珠洲市、中3、男)

<回答⑧> 

落ち込んでいる人に、はげましの言葉をかけたくなるのは、やさしい気持ちがあるからですね。特別なことを言ったり、したりする必要はありません。「おはよう」といつも通りに挨拶することや「一緒にお昼を食べよう」と誘うこと、となりにいることだけでも、あなたが気にかけていることは伝わります。すぐには元気にならないかもしれませんが、焦らずに、次に会ったときも挨拶をしましょう。もし、つらかった時のことを話してくれたら、大変だったねといたわりましょう。食事が食べられない、夜眠れていないなどのようにとても具合が悪そうなら、先生やスクールカウンセラーなど、周りの大人に、心配な状態の人がいることを伝えて助けを求めましょう。 

能登半島地震で被災した子どもたちをはじめ、さまざまな災害の影響で不安や心配な気持ちになっている子どもたちの役に立てるよう願っています。 

多くの子どもたちに届くよう、ぜひ周りの友だちやおとな(保護者・養育者、先生など)への共有や拡散をお願いします。 

  

  


【参考(大人の方向け)】 

セーブ・ザ・チルドレンは、緊急下の子どものこころのケア「子どものための心理的応急処置(子どものためのPFA)」の普及啓発に取り組んでいます。子どものためのPFAは、特別な心理的知識がなくても、災害などの危機的状況で子どものこころに配慮した支援ができるよう、支援者が取るべき行動や姿勢を示したものです。くわしくはこちらのページをご覧ください。 

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