2024.12.17 Vol.1「子どもの権利条約」報告審査のプロセスとは? 教育子どもの保護子どもの貧困 1989年、国連総会で54条の子どもの権利を定めた、今の「子どもの権利条約」が採択されました。 この条約の採択を通し、世界中の国々が子どもには権利があること、つまり子どもは権利の主体であることが示され、子どもたちを世界各国が協力して守るために努力することに合意しました。 日本では、1994年にこの「子どもの権利条約」を国として守ることを約束(批准)しました。 しかし、この約束が実際に日々の生活の中で守られるようにするためには、さまざまな取り組みや仕組みが必要です。 各国政府が、子どもの権利条約で定められた子どもの権利をしっかり守っているかどうかのチェックや、守っていない場合にどのような対策が行われているのでしょうか? 子どもの権利条約が守られるための仕組み 子どもの権利条約を締結した国は、定期的に(最初は2年以内に、その後は5年ごとに)条約に定められた子どもの権利を守るために行った取り組みを報告し、子どもの権利委員会がその報告について審査することになっています。 子どもの権利委員会とは、国による子どもの権利条約の実施状況をチェックするために国連(国際連合)によって設立された機関で、世界中から選ばれた18人の専門家[1]がメンバーとなっています。 国の取り組みに関する報告書を受け取った子どもの権利委員会は、NGOなどからの追加の情報も参考にしながらそれを検討し、「セッション」と呼ばれる会議でその国の政府と議論します。 そして、国が子どもの権利状況をより良くするための助けとなるようなアドバイス(勧告)を行います。 日本政府からの報告に対しては、これまで1998年、2004年、2010年、2019年に子どもの権利委員会からの意見が出され、日本で改善すべきいくつかのポイントについて勧告が行われてきました。2019年の意見では、以下を含む数多くの勧告が出されています。 2019年に出された日本で改善すべきいくつかのポイント 子どもの権利に関する包括的 (全体的にまとめること)な法律の採択 子どもによる申し立て(「こういうことがあって困っています」と伝えること)を子どもに配慮した方法で受理、調査、対応することを目的とした、政府から独立した仕組みの設置 虐待や性的暴力の被害を受けた子どものための使いやすい申し立ての仕組みの設置 子どもの貧困を減らすための戦略の強化 学校におけるいじめ防止キャンペーンの実施 日本では、特に2023年4月から子ども基本法が施行され、こども家庭庁が活動を開始して以降、勧告の実施につながるさまざまな取り組みが見られます。子どもの権利オンブズパーソン[2]を設置する地方自治体の数も、2019年時点の33から50を超えるまでに増えているなどの改善点が見られます。 しかし、国レベルの子どもの申し立てのための独立した仕組みの設置はいまだ実現していないなど、勧告の完全な実施のためには多くの課題が残されています。 こども基本法とこども家庭庁については、こちらのページをご覧ください:https://asuno-compass.savechildren.or.jp/child-rights/cfa/(政府や自治体の取り組み) 子どもを含む市民は、日本政府が勧告をどのように実施してきたかということや、政府報告には含まれていない子どもの権利の問題について子どもの権利委員会に対して情報提供をすることができます。 子どもの権利条約と国の関係 ※甲斐田万智子監修 『きみがきみらしく生きるための子どもの権利(KADOKAWA, 2023)』 の中の図を参考に、セーブ・ザ・チルドレンが作成 次回は、世界の子どもたちが報告審査プロセスの中で、子どもの権利委員会へどのような形で情報提供を行ってきたかをご紹介したいと思います。 [1] 2024年12月現在、日本からも大谷美紀子弁護士が、18人の委員のうちの一人(2021年5月から2023年5月まで委員長)に選ばれています。 [2] 子どもの権利侵害に関する相談を受け付け、子どもの救済を行うことなどを通じて、子どもの権利が広く実現されるために活動する人。