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2024.12.11

子ども虐待(児童虐待)とは?

子どもの保護

子ども虐待は、保護者やおとなが、子どもを殴ったり、怖がらせたり、大切にしないことで、子どもの体や心が傷つけられてしまうとても深刻な問題です。セーブ・ザ・チルドレンは、すべての子どもが虐待から守られ、恐怖や不安を感じることなく、安心・安全な環境で成長できる社会の実現を目指しています。このページでは、その説明や現状、行政や民間団体などが提供する支援について紹介します。

子ども虐待とは

子ども虐待とは?

子ども虐待とは、親や他のおとなが、子どもに対して以下のようなことをすることです[1]:

  • 身体的虐待:殴ったり、蹴ったりして身体を傷つけることなど。
  • 心理的虐待:怖いことを言ったり、無視をしたりして心を傷つけることなど。
  • 性的虐待:子どもをベタベタ触ったり、性器や性交を見せたり、強いたりすることなど。
  • ネグレクト:食事、衣服、住むところを与えないで放置すること、病気でも病院に連れて行かないことなど。

子ども虐待の現状

2022年度には、児童相談所に21万件以上の虐待相談[2]があり、過去最多となりました。特に、子どもが同居する家庭における配偶者に対する暴力(面前DV)に関する警察からの通告が増え、心理的虐待の相談件数が増加しています。過去と比較すると2015年度の10万3,286件から、相談件数が2倍以上となり、毎年過去最多を更新しています。

「しつけ」としての体罰などが虐待につながるリスク

時には、親やおとなが「しつけ」のつもりで体罰をすることがあります。体罰やこころを傷つける行為は、より深刻な虐待につながる危険性があります。例えば、オーストラリアの子どもの死亡例と重症例を分析したところ、多くの事例が「しつけ」のつもりでたたくことから始まったということが明らかになりました[3]。

日本では、2020年4月から親などによる体罰が法律で禁止になっています[4]。家庭を含むあらゆる場面での子どもに対する体罰や暴言などのこころを傷つける行為をなくすことが、子ども虐待を早いうちから予防するために重要です。

虐待が起こる背景とは?

厚生労働省の改正版「子ども虐待対応の手引き」[5]には、「子ども虐待は、子どもの心身の成長および人格の形成にも重大な影響を与えるとともに、次の世代に引き継がれる恐れがあるものであり、子どもに対する最も重大な権利侵害である」と書かれています。

でも、なぜ虐待は起こってしまうのでしょうか?

主な理由として考えられる点を3つ紹介します。

親をとりまく原因

親が病気や心配事があって、精神的に不安定な時、子どもとの時間を大切にするのが難しいことがあります。また、親自身が、子どもの頃に虐待された経験がある場合もあります。親がストレスを抱えたり、お金の問題があったりすると、虐待が起こることがあります。親が助けてほしいときは、誰かに相談することが大切です。

セーブ・ザ・チルドレンでは、子どもの権利や子どもの年齢に応じた発達段階を知り、目の前の子どもに向き合うために必要なことを理解したり、子育てがラクになるヒントを紹介したりするWebサイト「おやこのミカタ」を公開しています。相談窓口もこちらに載っています。

家族や社会の環境の変化

家族が少人数になってきたことで、子育てを手伝ってくれる人や相談できる人が少なくなっています。また、お金の問題も大きな理由です。さまざまな背景や理由で仕事をなくして、収入が減っている家もあります。

子どもは脆弱な立場に置かれがち

子どもは、おとなよりも弱い立場に置かれがちです。子どもを虐待することは、家庭内でより弱い立場にある子どもに対して行う行為です。「子どもも一人の人間」という考え方が大切で、子どものことをよく理解して、体罰を使わずに接することができれば、虐待につながるリスクを減らせる可能性があります。

もしもあなた自身が、上記の虐待に関する説明で思い当たることがあるとしたら

今、みなさんが「身の危険を感じる」、「親が怖くて一緒に住んでいたくない」といった場合は、電話やSNS、面談を通して、児童相談所というところの人(相談員)が相談にのってくれます。

虐待にあった時に、助けてもらえる仕組みがいくつかあります。みなさんの希望や家庭の状況から判断して、親と離れて暮らすことができる児童養護施設などで生活できるようにしてくれることもあります。

「相談したのがバレたら親に怒られるんじゃないか」と心配な場合は、名前や住所を言わないで、まず相談してみることもできます。

もし学校の先生や、スクールカウンセラーなど、信頼できるおとなが周りにいたら、そのような人に相談するのもいいと思います[6]。

こちらの「相談窓口一覧」に、政府や各地域が開いている相談窓口をのせています。「自分さえ我慢すればいい」と思わずに、もしまわりに信頼できるおとながいたらその人に、そして知らない人の方が話せる場合はこのような相談窓口に話してみてください。

もしも友人から虐待の相談を受けたら?虐待を見かけたら?

もしもあなたが、友だちから「虐待を受けている」という相談を受けたら、あるいは虐待されているかもしれないという子どもを見かけたら、とても心配になりますよね。また、どうして良いか分からず、迷ったり困ったりする気持ちになることも多いと思います。
そんな時、あなた自身で状況をすべて解決しようとしたり、すべての責任を背負ったりする必要はありません。

まず、友だちに他の信頼できるおとなに相談しても良いかを確認してから、信頼できるおとなに相談してみましょう。もし友だちから「だれにも言わないで」と言われたら、「じゃあ一緒に相談機関に行ってみない?」などと声をかけてみてください。

もし友だちから「どうしても言わないで」と言われたら、勇気を出して児童相談所虐待対応ダイヤル「189」(いち・はや・く/通話料無料・年中無休)に電話して、あなたが聞いた状況を相談員に伝えてください。189に電話をすると、その地域の児童相談所に電話がつながり、通告したり相談したりできる仕組みになっています。ここでは、誰が連絡したかはわからないように対応することが約束されています[7]。また、友だちにも189のことを教えてあげてください。

相談を受けた方へ ― ゲートキーパーになろう!-

ゲートキーパーとは、悩んでいる人に気づき、声をかけてあげられる人のことです。

特別な研修や資格は必要ありません。誰でもゲートキーパーになることができます。以下のページでは、周りで悩んでいる人がいたり、すでにゲートキーパーとして誰かを支えているあなたへの支援などについて書かれています。

(青少年向け)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/gatekeeper2.html

(ゲートキーパーへの支援)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/gatekeeper3.html

子どもだけで伝えることには限界があることも多くあります。友だちや知り合いを守るためにも、一人で抱えきれない時にはぜひ周りにある支援に頼ってみてください。

 

 


[1]「児童虐待の防止等に関する法律」第2条
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/dv22/01.html

[2] 令和4年度 児童相談所における児童虐待相談対応件数(速報値)
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/a176de99-390e-4065-a7fb-fe569ab2450c/b45f9c53/20240926_policies_jidougyakutai_26.pdf

[3] Nielssen, O.B.et al, Child homicide in New South Wales from 1991 to 2005, Medical Journal of Australia, 2009,vol.190, No.1, 7-11.

[4] 子ども虐待対応の手引き(令和6年4月 改正版)

20240422_policies_jidougyakutai_hourei-tsuuchi_taiou_tebiki_22.pdf (cfa.go.jp)

[5] 「子ども虐待対応の手引き」の一部改正|こども家庭庁 (cfa.go.jp)
https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/hourei-tsuuchi/taiou_tebiki

[6] 10代向け | 虐待を受けているかも?そんな時どうすればいい? | Mex ミークス | よみもの (me-x.jp)
https://me-x.jp/column/3282/

[7] 児童相談所虐待対応ダイヤル「189」について
https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/gyakutai-taiou-dial

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