2024.11.08 【Vol.2 保健・栄養】すべての人に健康を-ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ達成のために- 保健・栄養 ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)とは、誰もが、どこにいても、お金に困ることなく、必要な時に質の高い保健医療サービスを利用できる状態のことを言います。 UHCは、世界保健機関(WHO)が2005年に初めて提案しました。その後、2012年12月12日の国連総会で、世界の国々が国際社会の共通目標とすることに合意しました。そして、毎年12月12日がUHCの大切さを呼びかける「UHCデー」として定められました[1]。 近年、保健医療サービスを必要としている人々が増加している一方で、現状に目を向けると、世界人口の約半数である約45億人が、様々な理由で最低限の保健医療サービスを受けることができずにいます[2]。また約13億人が、高額な医療費の支払いが原因で貧困状態に追いやられており、UHC達成への道のりはまだまだ遠い状況です[3]。 保健医療サービスを受けることができずに命を落とす人を一人でも減らすためには、緊急時でもすぐに診察を受けることができる病院や保健センターなどの施設や医療設備を整えたり、医師や看護師、薬剤師といった医療の専門家を増やしたりすることが重要です。 また、治療や予防接種の効果にうたがいを持ったり、受ける必要がないなどと考えている人々の意識を変え、安心して保健医療サービスを受けてもらうように働きかけることも必要です。 UHCを達成するうえで特に難しいのは、保健医療のために使えるお金を増やしていくことです。日本を含む先進国はこれまで、貧困問題を抱える開発途上国に対して資金面の援助を行ってきましたが、それを継続、拡大していくだけでなく、開発途上国自身が自立して、高額な医療費が発生しないように健康保険制度を確立したり、保健医療の仕組みを整えるための国家予算をしっかりと確保する努力をしなければなりません。 日本は、これまでUHC達成に向けた国際的な取り組みを推進してきました。国民皆保険という制度によって、支払い可能な費用で必要な保健医療サービスが受けられる仕組みをいち早く整えてきた日本は、こうした経験を他の国々に共有し、技術面の支援もすることで、強いリーダーシップを発揮することが期待されています。一方で、日本でも貧困や外国ルーツであることなどを理由に、必要なサービスが受けられない人はいる状況で、「UHCが達成されている」とは言えません。 健康への権利を実現するためには、誰一人取り残されることなく保健医療サービスを受けられるようにすることが不可欠です。「すべての人に健康を」をスローガンに、世界各国がそれぞれの国において、また互いに協力して、保健医療に関わる問題を解決していくことが求められています。 子どもの権利と健康 ~「子どもの権利条約」の中 で、健康と特に関係の深い第6条と第24条~ 第6条 生命・生存・発達への権利 すべての子どもが生きる権利・育つ権利、命を大切にされる権利を持っていることを認めています。締約国は、それを守るために最大限努めなければなりません。 第24条 保健医療サービスを受ける権利 子どもたちがいつでも健康でいるために、必要な保健・医療サービスを受けられることが約束されています。子どもたちが十分に栄養のある食事をとり、清潔な水を飲めるようにすることや、母親が出産の時に保健・医療サービスを受けられるようにすることが求められています。また、子どもの親や子ども自身が、子どもたちの健康を守る知識を身に着けるため、教育の機会を提供することや、子どもの健康を害するような習慣をなくすことも、約束されています。特にこうした支援を必要とする開発途上国のために、国際協力を推進することも求められています。 ★イラスト付き子どもの権利条約 条文一覧 (savechildren.or.jp) も見てみよう! イラスト付き子どもの権利条約 条文一覧 [1] UHCデーウェブサイトhttps://uhcday.jp/ [2] UHCグローバル監視報告書 2023 : UHCへの道から取り残された数十億の人々 | 公益社団法人 日本WHO協会 (japan-who.or.jp) [3] Billions left behind on the path to universal health coverage (who.int)