政府や自治体の取り組み 全てのこどもが、将来にわたって幸福な生活を送ることができる社会の実現を目指す、こども家庭庁の取り組みをご紹介します。 なぜ「こども家庭庁」がつくられたの? こども家庭庁やその他の省庁のお仕事とは? こども家庭庁・こども基本法ができて変わったこと セーブ・ザ・チルドレンによる子どもたちの意見を聴く取り組み なぜ「こども家庭庁」がつくられたの? こども家庭庁がつくられた背景 2020年度(2020年4月~2021年3月)、子どもが親などから虐待を受けたとして児童相談所に相談があって対応した件数や、不登校の子どもの数、そして自殺をしてしまった子ども・若者の数がこれまでで最多となりました。また、全国的にコロナが流行したことで、人と会う機会が減ったり、親の収入が減ってしまい悩んだり苦しい思いをしたりした子ども・若者が増え、今もまだ親の収入や人との関わり方の変化など、コロナの影響を受けている子どもは多くいます。 どうして、子どもたちを取り巻く状況はここまで厳しいものとなってしまったのでしょうか?皆さんはどんなことが理由として考えられると思いますか。 子どもたち一人ひとりの状況はそれぞれ異なりますし、原因はさまざまでしょう。しかし、その大きな原因の一つとして考えられるのが、これまで日本では「子どもの権利」が大切にされてこなかったということです。また、子どもたちにとって苦しくて大変な状況を改善したいときに、子どもに関わるおとなが、子どもたち自身から意見や声を聴くことを重要だと認識していなかったことも、原因の一つとしてあげられます。 そこで、このような状況を良くしていくために、子どもに関する取り組みを日本の社会の中心において、子どもの目線で、子どもの権利を大切にして、すべての子どもがその命を守られ、自分らしく健やかに安心して成長することができるように、政府は「こども家庭庁」という新しい国の組織を作るための法律案を2022年2月に国会に提出しました。その法案が6月に可決(賛成)され、こども家庭庁ができることが決まりました。具体的な役割について、この後も様々な話し合いが持たれた後、こども基本法が動き出し、こども家庭庁は2023年4月1日にスタートしました。 内閣官房こども家庭庁設立準備室が発表する「こども家庭庁の目的や役割について(動画)」も見てみよう。 動画はこちら こども家庭庁が大切にする「子どもの権利」って? ①権利ってなんだろう 権利とは、社会のルールに従うことを条件として認められる、「〇〇してもいい」、「▼▼しなくていい」という資格のようなものです。例えばお金を払って商品を買うとき、お金を払うというルールを守れば、商品を受け取る「権利」が生じます。 ②人権ってなんだろう 権利のなかでも、人間であればだれもが当たり前に持っている権利のことを、「人権」といいます。生きること。自由に意見を言うこと。勉強すること。暴力から守られること。病気やケガをしたときに治療を受けられること。これらは「すべての人間が、生まれたときから持っている権利」、すなわち人権です。 人権は権利の一つですが、最も大切で特別なもので、お金を払ったり、テストに合格したり、その他何かをしてその引き換えじゃないと手に入れられないものではありません。「人間として生まれたこと」、ただそれが唯一の人権を持つための「資格」です。 ③ 「子どもの権利」ってなんだろう そして、「子どもの権利」とは、子どもの人権のことです。「権利」と書いてあるものの、「人権」のことなので、ややこしいですよね。皆さんが「人間として生まれ」、かつ「18才未満の子ども」であれば、誰でも「子どもの権利」を持っています。「なにかをしなくちゃ、子どもの権利は持てないんだ」、ということは絶対にありません。皆さんが持つ人権=「子どもの権利」はとても大切で、誰からもどんな状況下でも奪われてはならないものです。だからこそ、自分が持つ「子どもの権利」だけでなく、自分以外の人の「子どもの権利」も、同じように大事にすることがとても大切です。 子どもの権利について、くわしくはこちら! 子どもの権利について こども家庭庁やその他の省庁のお仕事とは 子ども家庭庁が取り組む仕事 ① こども家庭庁が大事にすること こども家庭庁の「基本方針」では、これからの「子ども政策」を進めるときに大事にすることを6つ、こども家庭庁が大切にする姿勢を3つあげています。 ② こども家庭庁の仕事 こども家庭庁は、「内閣総理大臣」、「こども政策担当大臣」、「こども家庭庁長官」をリーダーにします。その人たちの下に「企画立案・総合調整部門」、「成育部門」、「支援部門」という3つの部門を作り、それぞれの仕事を行います。 ③ 全国各地の子ども・若者が参加する仕組みの例 こども家庭庁が特に大事にするポイントの一つは、「子どもの声を聴くこと」とされています。これまでにも、全国のさまざまな市や町で独自の子ども・若者の意見を聴くための取り組みが行われきました。そのうちのいくつかの事例をご紹介します。 そもそも「省庁」ってどんな機関 日本には1府12省庁の「省庁」があり、学校のことは「文部科学省」、健康や子育て、労働に関することは「厚生労働省」など、それぞれが別々の役割を持って国の仕事を進めています。また、2011年の東日本大震災の後に作られた「復興庁」や国と自治体のデジタル化を進める「デジタル庁」のように、社会の状況によって新しい機関が作られることもあります。「こども家庭庁」が担当する国の仕事は、子どもと子育てに関わることです。 こども家庭庁の担当する仕事については、上にある2つ目の動画も参考にしよう。 「政策」ってなに 「政策」とは、政府や政党が政治を行うための方針や手段のことを指します。子どもに関わる政策は、例えば、幼稚園、保育所、認定こども園等を利用する3才から5才までのすべての子どもたちの施設の利用料を無くした幼児教育・保育の無償化制度や、国や地方公共団体、学校にいじめを防止するための対策を定めることを求める「いじめ防止対策推進法」などが挙げられます。 また、皆さんにとっては子どもたちの英語力をアップさせるために行われた「小学校5年生からの英語の教科化」や、インターネットを活用して子どもたち一人ひとりの学びの充実を目指す「児童生徒一人一台コンピューター(GIGAスクール構想)」などは、なじみが深いかもしれません。このような子どものための政策のうち、学校に関するもの以外の大部分をこども家庭庁が担当しています。 こども家庭庁・こども基本法ができて変わったこと こども基本法って? これまで日本では3つの原則の内の一つとして、国民誰もが人間らしく生きる権利を持つという「基本的人権の尊重」を定めた日本国憲法、そしてその下に位置づけられる「子どもの権利条約」の下、子育てや貧困に関する法律のことは内閣府、保健や医療、福祉に関する法律のことは厚生労働省というように、各省庁がそれぞれ、子どもや子育てに関する法律を定め、それら個別法に基づいた政策を行ってきました。 その一方、子どもの権利を総合的に保障する国の基本方針や理念は、これまで日本にはありませんでした(日本政府は、そのような法律を作るようにと、国連子どもの権利委員会からも長年注意されてきました)。そして、この間、虐待やいじめ、不登校、自殺、経済的困窮家庭で生活する子どもなど、子どもや子育てを取り巻く国内の状況はどんどん悪くなっていきました。 このような背景があり、2022年6月15日、第208回通常国会において可決となったのが、国内のあらゆる子ども施策の基本的な考え方になる「こども基本法」です。 こども基本法について、こども家庭庁のウェブサイトもみてみよう。 こども基本法について 子どもたちが社会にもっと参加できるように こども家庭庁が作られたのと同じ日に施行されたこども基本法には、「こども・子育てをしている人のwell-being(幸せ)・参画・視点を重視」ということが書かれています。このことから、国や地方の政治に対してこれまでよりも活発に子どもや若者の参画を促したり、子どもや若者の声を聴いてそれを活かすための取り組みが進んだり、これまで「おとな目線」で考えたり決められていたことが、今までよりも「子ども目線」を取り入れながら決めていくことが定められました。これにより、子どもの声を聴く取り組みが、国や全国の自治体で行われることが義務になりました(こども基本法 第十一条)。 その他の具体的な取り組み こども家庭庁が進めている取り組みについては、こども家庭庁ホームページも見てみよう。 こども家庭庁が進めている取り組み セーブ・ザ・チルドレンによる子どもたちの意見を聴く取り組み セーブ・ザ・チルドレンは、子どもの支援活動を行う、民間・非営利の国際組織(NGO)です。これまで、市民社会の立場から、子どもの声が聴かれる社会の実現のために、活動してきました。子どもと政策決定者との対話の機会をつくったり、子ども参加の仕組み作りに関する働きかけや、自治体の職員向けの勉強会など、様々な形で子ども参加に関わってきました。 2022年6~7月 「子どもはこども家庭庁を知っている?子どもアンケート」 2022年6月~7月に「こども家庭庁」や「子どもの権利」について全国の18歳以下の皆さんに聞くために、「子どもはこども家庭庁を知っている?子どもアンケート」を行い、小学生から高校3年生まで、全国1,050人から回答が集まりました。このアンケートの結果、わかったことの一つは、こども家庭庁についてまだ子どもの皆さんによく知られていないということでした。そしてまた、子どもに関わる政策についてのわかりやすい情報や、自分の意見を持つための手助け、そして意見をおとなに伝える機会や、自分の意見が影響を与えられたという実感や適切なフィードバックを得られることが必要であるということが、アンケートでわかりました。 子どもアンケートからわかったこと くわしくはこちら! 子どもアンケートからわかったこと 2022年7~12月 「子ども・ユースキャラバン2022 君の意見が社会を変える!知ろう・話そう、子どもの権利」 2022年7月から12月にかけて、全国4ヶ所(青森県青森市・愛知県名古屋市・愛媛県松山市・沖縄県那覇市*)で、9才から18才までの子どもや若者が、子どもの権利やこども家庭庁の目的と役割について学び、子どもたちが普段の生活で感じているモヤモヤや、どのような場所だったら相談しやすいのか、こども家庭庁に期待することなどについて、子ども政策に関わっている政策決定者と話し合いました。4回のキャラバンを通して、100人を超える子ども・若者と、40人を超える政策決定者が参加しました。イベントで寄せられた子どもたち・政策決定者の声を通して、以下のようなことが明らかとなりました。 子どもにとっては、おとなの聴く姿勢とおとながきちんと答えてくれることが大事なこと 意見表明権について知ることで、子どもはより話しやすいと感じられること 子どもがこども家庭庁に期待するのは、子どもの意見を聴く仕組みづくりと、子どものモヤモヤを解決すること 政策決定者にとっては、意見を聴く姿勢についての説明が子どもの声を聴くために役に立つこと 子ども・ユースキャラバンについて くわしくは こちら! 子ども・ユースキャラバンについて *那覇市については、「広げよう!子どもの権利条約キャンペーン」に参加する団体として企画・運営 2023年5月~ 「子どもメガホンプロジェクト」 (「広げよう!子どもの権利条約キャンペーン」に参加する団体として企画・運営) 2023年の5月から活動を行っている子どもメガホンプロジェクトでは、子どもたちをとりまく問題を国や社会に伝えてみたい、という思いを持った、10~18歳の子どもたちが、全国からオンラインで集まり、「広げよう!子どもの権利条約キャンペーン」のおとなメンバーといっしょに、政策提言活動をしています。 2023年度は、毎月ミーティングを持ち、国連子どもの権利条約や子どもの権利について日本政府が取り組むべき課題についてまとめた総括所見について学びました。また、日本の子どもがかかえる子どもの権利の問題について政策提言をするために、ミーティングで学んだ内容を踏まえ、それぞれのメンバーが特に聞きたいテーマをピックアップして、全国子どもアンケートの質問を考えました。アンケートには、全国から子ども1,410人が回答してくれました。集まった回答をメンバーで分析して、2023年12月には国会議員や省庁関係者に対して院内集会で発表したり、2024年4月にはアンケートの内容を踏まえて、提言書を作成・公表しました。2024年度は、昨年作成した提言書をもとに、こども家庭庁に意見を伝えたり、国連子どもの権利委員会に向けたレポートを作る予定です。 子どもメガホンプロジェクトについて くわしくは こちら! 子どもメガホンプロジェクトについて 【このページに関するお問い合わせ】 公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン アドボカシー部 国内政策提言チーム 〒101-0047 東京都千代田区内神田2-8-4 山田ビル4F Tel: 03‐6859‐0015(平日9:00~17:30) メールアドレス: japan.advocacy@savethechildren.org 一覧へ戻る